『トルコクーデターと米露の損得勘定』

2016年7月22日

 

 今回トルコで起こったクーデターでは、内外で多くの意見が出ている。理詰めだが内容の薄いもの、理詰めとは言えないが、読んで面白い陰謀説、現状を伝えるだけのもの、と種々多様だ

 そのような多くの分析原稿を読んでいて分かることは、今回のトルコのクーデターでロシアが得をしたのか、あるいはアメリカが得をしたのか、という点だ。ロシアのプーチン大統領が事前に、トルコでクーデターが起こることを伝え、警告していたというものがある。

そして、そのことはプーチン大統領とエルドアン大統領とを、接近させているというものだ。そのことを踏まえたうえで、トルコがNATOから離脱するだろう。アメリカとの関係は希薄になるだろう、という憶測意見が出ている。

確かに、エルドアン大統領とロシアとの協力が進み、シリア対応でも、次第にアサド大統領に対する締め付けを、緩めてきてはいる。トルコのIS対応が激変したことは、アメリカの圧力によるものであったが、結果はロシアに好都合になってきているという説だ。現実は実に皮肉なものではないか。

ただ、トルコは未だにIS(ISIL)の戦闘員の、自国通過を認めている。その点について、シリアのアサド大統領は『毎週5000人の戦闘員が、トルコ経由でイラクやシリアに、入っている。』と語っている。それは事実であろう。

アメリカはどうであろうか。エルドアン大統領はつい最近、今回のクーデターには外国政府が関与していた、と言い出しているが、国名こそ明かしていないものの、誰にも彼が言う外国が、アメリカであることは、想像できよう。

お決まりのCIA陰謀説が、広い範囲で語られるようになったことは、マスコミの力がいかに弱くなったか、ということの証明ではないのか。マスコミはいずれの国でも、情報収集力や取材力が低下し、官報的な役割しか果たせなくなった、ということであろう。

アメリカのCIA関与説には、ウクライナの例が引き出され、真実味を帯びて語られているが、アメリカは盟友トルコに対して、現段階でそこまでやるのであろうか。あるいはあんな幼稚なクーデターを指図したのであろうか。いずれも信じ難い。

確かに、アメリカはエルドアン大統領の必要性を、低下させており、増長するエルドアン大統領を、いずれかの時点で処理しよう、とは考えているだろうが、それは今では無いような気がする。

エルドアン大統領の対極にいるギュレン氏についても、CIAとの関連が語られ始めているが、これは全く見当違いではないか、エルドアン大統領サイドが流している、『タメ』のデマ情報であろう。

 エルドアン大統領は『クーデターが再度起こりうる。』と語り始めているが、それは国民を縛り付けるための、発言であろう。トルコ国民を不安に陥れ、締め付けを正当化させるためであろう。あるマスコミは『エルドアン大統領には革命が必要だった。』という記事を掲載したが、必要な人がそれを計画するのは、至極当然のことであろう。