『クーデターでトルコは貧乏くじ引いた』

2016年7月20日

 

 715日に起こった、トルコのクーデターは、それが誰によって起されたものかは別に、トルコにとってはよくない状況を、生み出しつつあるようだ。ムーデイのトルコ経済に対する評価が、下がっているが、そのことはトルコに対する、外国からの投資が減る、ということであろう。

 また、トルコのエルドアン大統領にとって、念願のEUへのビザなし渡航も、遠のいたようだ。ドイツのオエッテインガー氏(デジタル・エコノミー・アンド・ソサエテイ代表)は、『今年中にトルコ人に対して、EUがビザなし渡航を許可することは、ありえない。』と語った。

 トルコ人に対して、ビザなし渡航を認めるようになれば、トルコ国内が不安定化しているなかでは、政治亡命や経済難民として、EUに入って来る者の数が増える、危険性があろう。そうでなくても、EUにとってはシリアなどからの、難民の流入が大きな問題に、なっているのだから。

 エルドアン大統領が唱えた、シリア難民への国籍付与も、EUにとっては見逃せない、チェック・ポイントであろう。もし、トルコ人にビザなし渡航を認めれば、現在270万人とも300万人とも言われている、新生トルコ人(シリア難民)が、EUに流入してくる、可能性は高いのだ。

 トルコ国内ではギュレン派一掃の動きのなかで、何千人もの判事や検察官が、職を失っている。そうなると、その人物はシリア難民なのか、ISのテロリストなのか、といったことはあいまいなままに、トルコ国籍を付与することも、起こり得よう。

 これではEUは安心して、トルコ人に対するビザの免除など、出来はしないだろう。従って、EUが今年中にビザなし渡航を、トルコ人に認めない、という予測と判断は、至極当然のことと言えよう。

 これでトルコ人は、EUへの出稼ぎや、ビジネスのパートナー探しや、投資ビジネスの掘り起こしは、不自由になるということだ。加えて、外国からの投資が減るとなれば、トルコの経済は今後、悪くなる可能性は、極めて高くとも、よくなる可能性は、全く期待できまい。

 トルコの目玉の、外貨獲得源である観光も、やはり国内不安を理由に、活発化することは期待できまい。大量の外人観光客を見込んで、次々と建設された豪華ホテルは、閑古鳥が鳴くということになろう。

 大型不動産への投資が、低迷することも、トルコの経済の見通しを暗くし、それは連鎖反応を、起こしていくことになろう。その先に予測できる出来事は、国民による革命か、軍による再度の、しかも本格的なクーデターであろう。