トルコのエルドアン大統領が、シリア難民にトルコ国籍を付与する、ということを言い出している。このことは、以前にもお伝えしたが、やはり選挙目的であるようだ。
トルコ国籍が与えられるシリア難民は、基本的にトルコの南東部に、留まっている人達だ。30万人の難民が対象となり、現在、トルコ国内に居住する720万人のシリア人のうち、当面は3~4万人に発行されるようだ。そして、最終的には、30万人がトルコ国籍を、得ることになるということだ。
これにはシリア人が、トルコ国内で所持金を、投資させることも狙っている。また、高度な科学知識を 持つ者も対象となる、それは彼らをトルコに引き留めるためだ。
選挙や科学知識、そして投資だけではなく、エルドアン大統領はシリア難民を他の目的でも、使いたいと考えているようだ。それはトルコ国内の、人口バランス問題だ。
シリアの南東部にはアラウイ教徒や、クルド人が多く居住しており、彼らの数はトルコ人よりも多い。そこでエルドアン大統領はシリア難民の、スンニー派の人達にトルコ国籍を与えることにより、人口面で優位に立とう、という作戦のようだ。
アナトリアやエスケンデルンには、アラウイ教徒が多く、エスケンデルンにはクルド人も多い。シリア難民にトルコ国籍を与えれば、アラウイ教徒やクルド人とトルコ人のバランスが、逆転するという計算だ。
同時に、シリア難民にトルコの国籍を与えれば、180万票が与党AKPに、入るという目算だ。
このエルドアン大統領の作戦は、実に賢明なように見えるのだが、必ずしもそうではあるまい。既に、トルコ国民がこのシリア難民に、トルコ国籍を付与するという考えに、猛反発しているのだ。
このエルドアン大統領の計画が、強引に進められれば、トルコ国民のなかの、AKP支持者もエルドアン大統領から、離れる可能性があろう。これからは数学というよりは、算数のレベルの計算になると思うのだが。
エルドアン大統領は最終的に、シリア難民にトルコ国籍を付与する方に、決断するのであろうか。物事は何事も計算どおりには、行かない部分がある。この問題が大きな反エルドアンの波を、トルコ国内に生み出す危険もあることを、忘れるべきではあるまい。