これはICHに掲載された、サケル(Saker )氏の論文の、要点だけを紹介するものだ。彼の指摘によれば、トルコはいまや完全に、孤立状態にあるということだ。
以下に彼の指摘している、トルコの危険な状況なるものをご紹介しよう。
:シリアとの危機―ISを使ってアサド政権を打倒しようと思っていたが、いまではISが敵に回っている。
:EUとの危機―EUは3000年まで、トルコを加盟させないと言った。メルケル女史との関係も冷却化している。
:アルメニアとの危機―ドイツ議会はアルメニア虐殺を承認。ドイツとのラブ・ストーリーの時期は終わった。
:アメリカとの危機―米特殊部隊はクルドの記章を、軍服につけたことによる関係悪化。帝国はイラク・シリア・トルコにクルドを必要としている。
:イランとの危機―トルコのシリアのアサド体制打倒政策による関係悪化。
:クルドとの危機―クルドに対する敵対姿勢を明示し、双方の関係は完全に戦争状態になった。
:NATOとの危機―NATOはロシア機撃墜で、トルコを支持しなくなった。トルコの戦争への動きに、NATOは引き込まれたくない。
:ロシアとの危機―ロシア機の撃墜以来、ロシア側がトルコに対して、経済制裁発動。経済的に莫大な損失をこうむり、トルコにとっては外交的にもロスが大きい。
もちろんこうした状況を、トルコはよく分かっており、対応策を取り始めている。最近のトルコ政府による、近隣諸国との関係改善などは、その典型であろう。しかし、それは不十分であろう。
イスラエルとパレスチナ・ハマースとの関係改善の仲介も、少しでも間違えば、トルコは危険に追い込まれることになろう。ハマースのテロを支援したことに、なりかねないからだ。
トルコはガザのハマースに対し経済援助をし、工場を建設してやれば、パレスチナ住民の民政は向上し、テロは減少すると考えているだろうが、パレスチナ問題はそれほど単純ではないのだ。
イスラエル政府側はテロをやめさせろ、とトルコ政府に要求しているが、ハマース側がテロを放棄することはありえない。ハマースはあくまでも、占領された土地を奪還するのが目的であり、その日までテロを止めることなどありえまい。