『巡礼に魔がさしたのか、連続する事故多数の死傷者』

2016年7月 3日

 昨年のハッジ・シーズンには、ハッジの締めくくりの、悪魔に石を投げる場所につながる通路で、サウジアラビア政府の発表では770人が死亡、イラン政府発表では4700人が死亡、第三者の発表では2000人以上が圧死する、という大事故が起こった。

 通路が大混雑しているなかで、一部が倒れその流れが止まらず、多数のハッジ参加者が、踏み付けられて死亡する、という事故だった。これに対して、イラン政府はサウジアラビア当局の手落ちが、大きな犠牲を生んだとして、厳重に抗議している。この事故では、イラン人の犠牲者が大半だった、ということもあろう。

 それから間も無くして、今度は聖地メッカで、工事中の大型クレーンが倒れ、やはり100人以上の犠牲者が出ている。犠牲者はクレーンの下敷きになっての、死亡だった。

 そして去る金曜日(71日)には、メッカでやはり巡礼者が、18人圧迫されて負傷している。多数の巡礼者に押し倒され、踏みつけられての災難だった。

 いまのシーズンは、イスラム教の断食月であるラマダン月で、その終わりの部分は、ライラト・ル・カドル(聖なる夜)と呼ばれ、神聖な時期とされているため、世界中から多数のムスリムが、メッカに巡礼に出かけるのだ。

 こればかりではなかった。メッカでの事故が起こった翌日(72日)には、サウジアラビアのターイフ・リヤドからメッカに向かう、巡礼者を乗せたバスが横転し、数十人が死亡し、36人が負傷する、という事故が起こった。

 その大半はエジプトと、スーダンからの巡礼者だった、と報告され、しかも、怪我人のほとんどは、女性と子供だった、ということのようだ。

 これらの事故を知り、イラン政府はそれ見たことかと、内心喜んでいるのかもしれない。イラン政府は昨年のハッジにおける大事故の後、サウジアラビア政府にはハッジを安全に、挙行する能力は無いので、国際的なハッジ運営機関を、創設するべきだ、と主張していた。

 多数の人が集まれば、そこで押し合いが起こり、倒れ踏みつけられて、怪我をしたり死んだりする人が出るのは、当たり前なのであろう。日本でも以前、花火見物で似たような事故が、起こっている。

 イランは今回の2度起こった事故を機に、サウジアラビア非難を強めるものと思われる。そして、それはサウド王家に対する、非難になっていくのではないか。『サウド王家には、メッカを管理する資格が無い』といった非難が始まるだろう。その事はサウジアラビア・イラン間の、緊張を高めて行くだろう。それが軍事衝突に発展していく、危険性があることを、忘れるべきではあるまい。