エジプトのシーシ大統領が、2013年6月30日に起こった、革命3周年目(クーデター)の、記念演説を行った。彼は過去3年間の革命の成果を披瀝し、加えて何が国家の敵なのかを語り、国民が何をすべきかを語っている。
革命はエジプト国民に、希望ある明るい未来を約束しているとし、国家は幾つもの巨大プロジェクトを、過去3年の間に敢行してきたとも語った。そのなかの一つは、第二スエズ運河の建設であろう。
そして、国民の生活レベルの向上も語っている。しかし、実際にはインフレ、失業問題があり、必ずしも彼が語ったような状況には、現在のエジプトは無いのではないか。
ただ言えることは、エジプト経済がゆっくりではあるが、上向きになりつつあるのではないか、と思われる。アメリカに失望したアラブ湾岸諸国は、エジプトの軍事力に対する、再評価を始めており、それに見合った経済援助をするように、なってきているからだ。
エジプトの今後の経済発展には、やはりテロとの戦いが、主要なテーマであろう。シーシ大統領はブラック・テロリズムが、エジプト国民の夢を壊すとして、強力に対応して行く方針を示している。
シーシ大統領はこのテロとの戦いでは、国際的な連携が重要だ、とも指摘している。湾岸諸国との協力、そしてイスラエルとの協力も、必要であろうし、述べるまでも無く、欧米との協力も必要であろう。
このシーシ大統領の演説を、エジプト国民はどう受け止めたのであろうか。最近では、次第にムスリム同胞団への支持が、増えてきているという情報もある。他方では、シナイ半島北部だけではなく、エジプト本土でのIS(ISIL)によるテロが、増えてきている。
IS(ISIL)はエジプト国民に対して、体制と戦えと呼びかけている。それが何処まで拡大していくのか、あるいはエジプト国民が、冷静に対応するのか見所だ。エジプト国民は総じて、過激なイスラムは、好まない傾向がある。彼らは全体的に、穏健な性格なのだ。その点に期待したい。
ただ気になるのは、シーシ大統領の記念講演が5分間でしかなかった点だ。通常エジプトに限らず、アラブの大統領や国王はこうした記念日には、1時間も2時間も講演するのが普通だ。
シーシ大統領の演説が短かったのは、彼が実務型だからであろうか、あるいはそれ以外に理由があったのであろうか?