6月28日に起こった、トルコのイスタンブール空港(アタチュルク空港)でのテロ事件は、犠牲者が多くしかも複数の国々に、犠牲者がまたがっていた、ということもあり、国際社会で大きな反響を呼んでいる。
事件から間もなく、犯人像が明らかになってきたが、彼らはウズベキスタン人、キルギス人、そして北コーカサスのチェチェン人だった。つまり、全員が旧ソ連の住民だったということだ。
もちろん、この空港テロ事件は、IS(ISIL)によって起こされたものであることに、間違いはあるまいが、どうしても引っかかるのは、犯人の全員が旧ソ連の出身だった、という点だ。
トルコとロシアとの関係は、ロシア機をトルコ機が撃墜し、しかも、パラシュートで脱出したロシア人パイロットは、地上から撃たれて死亡する、という事件が起きている。
以来、ロシアとトルコとの関係は、最悪の状態にあったということだ。プーチン大統領がトルコに対して、報復を考えてもおかしくはあるまい。ロシア政府はトルコに対して輸入規制をし、トルコの野菜や果物の輸入を止めていたし、トルコ人に対して、ビザ発給もブレーキをかけていた。
トルコ政府はイスタンブール市と、イズミール市のIS(ISIL)の拠点を襲撃し、13人を逮捕している。イズミール市の拠点はIS(ISIL)の戦闘員に対して、資金提供、武器の提供、戦闘員のリクルート、隠れ家の提供などをしていたようだ。
イスタンブール空港襲撃事件の前には、IS(ISIL)はアンカラ市やアダナ市でのテロも計画したが失敗している。トルコがそれまでのIS(ISIL)支援を止めアメリカ政府の意向に沿ってIS(ISIL)に対する締め付けを強化していたことが、今回のテロと関連しているのかもしれない。
また、トルコがロシアとの関係改善に動き、エジプトを始めとする、近隣諸国との関係改善にも、動いていたことが、今回のテロ事件を起こす、きっかけになったのではないか、と推測する専門家もいる。それは、そうしたトルコの動きは、おのずからIS(ISIL)を追い込むことになるからだ。
今回のテロ事件の首謀者は、チェチェン出身のアハメド・チャタエフだった、と発表されているが、チェチェンではロシア政府に対する、イスラム教徒テロリストの活動も、存在することから。納得がいこう。IS(ISIL)の戦闘部隊の幹部には、多数のチェチェン人が名を連ねてもいる。
今回のテロ事件で、背後にロシアがいる、とは思えないが、少しは疑っても見たい。あるいは、ロシアもイスラム原理主義者の、格好の標的になっている、ということなのかもしれない。