アメリカのオバマ大統領は,シリアの内戦が始まった頃、サウジアラビアなどアラブ湾岸諸国の首脳に対して,アメリカはシリアのアサド政権を打倒すると約束した。
以来、6年目に入るのだが、相変わらずアサド大統領はその地位にあり、シリアを支配している。このことは、アラブ湾岸諸国を失望させ、アメリカに対する信頼感が、大きく揺らいだ。
他方、ロシアは強力な軍事行動を行うことにより、これらの諸国の信頼を勝ち得、アメリカ支持派よりもロシア支持派が、増えているのではないか。それは、アラブ湾岸諸国ばかりではなく、中東全域に見られる傾向であり、世界的にもロシアを評価する傾向が、強まっている。
そうしたなかで、アメリカのCIA長官ブレナン氏が『シリアは統一国家として存在し続けることが、難しいだろう。』という予測を口にした。つまり、シリアは将来、幾つかの国地域に分裂する、と語ったのだ。
同時に彼は『シリアのアサド大統領は、シリア国家再建の目途が立つ迄、その地位に留まるべきだ。』とも語っている。それは、アサド大イ統領を徹底的に利用し、その後、用事が無くなれば捨てる、ということであろう。
捨てられるアサド大統領が、その後どのような形になるのかは、明らかになっていない。ロシアなど何処かの国に亡命出来るのか、あるいは国内で処刑されるのかについては、誰も明言を避けている。つまり、アサド大統領はアメリカのシリア戦略の、時限装置付きの、捨石でしかないということだ。
ロシアとアメリカはこれまで、シリア問題の解決はシリアを幾つかの国に、分断するしかないと考え、どのような形にすることが、米露の利益に適い、その後のシリアが安定していくか、ということが、散々話し合われてきたろう。
ロシアの軍港のある地中海沿岸地区には、アサド大統領などアラウイ派の人達の居住する、アラウイ国家が設立され、北シリアにはクルド国家が誕生し、その他の地域はスンニー派国家が誕生するのではないか、と言われて久しい。
従って、CIA長官ブレナン氏の今回の発言は、何等新味のある内容ではなかったのだが、何故この時期に彼はそのお題目を、唱えたのであろうか。それは、シリア問題の解決が、最終段階に入ったということを、伝えたいからではないのか。
シリアやイラクで猛威を振るっていたIS(ISIL)は、そろそろ逃亡を考える段階に入っている。石油密輸の途は閉ざされ、資金難にも直面している。米露の猛攻撃儲けシリア軍も強化されている。アレッポでは難民と一緒に、IS(ISIL)の戦闘員を逃してやる、逃げ口もロシアが準備した。ゲームは既に終わったのであろう。