元イスラエルの参謀総長を務め、首相にも就任したバラク氏が、ネタニヤフ首相の秘密計画を、CNNとのインタビューで明かした。それによればネタニヤフ首相には、パレスチナとの共存の、2国家制は考えていないということだ。
イスラエル国家と並んで、パレスチナにも国家の設立を認める、というのがアメリカを始めとした、世界の認識なのだが、ネタニヤフ首相にはその考えは、無いということだ。
ネタニヤフ首相は彼の考える、地中海からヨルダン川までに存在する土地は、イスラエル国家だけのものだ、ということを具体化していくために、パレスチナ政府との交渉をするとは言うが、実際のところはノーであり、パレスチナに国家を与えるつもりは、全く無いということだ。
その範囲に居住するパレスチナ人には、イスラエル国民と平等の権利は、与えられないということになる。そこでネタニヤフ首相はイスラエル国民に、この考えを押し付けるために、パレスチナからの恐怖を、煽っているということのようだ。
ネタニヤフ首相の考えでは、ヨルダン川西岸地区など、パレスチナ人の居住区をイスラエルに併合した後、パレスチナ人に投票権を与えれば、一夜にして実質二つの国家が、出来上がってしまう、ということになる。しかも、その国家はムスリムの方が人口で勝っているのだ。これはイスラエル側には受け入れられないということだ。
バラク氏によれば、ネタニヤフ首相はイランの脅威を強調するが、イランは実際にはイスラエルにとって、脅威にはなっていない。イランの攻撃でイスラエル国民が、多数殺害されるという彼の主張は嘘であり、イランとホロコーストの悲劇を並べることは、ホロコーストに対する冒涜だというのだ。
5万人の兵士を擁するIS(ISIL)についても、第二次世界大戦時に使用された武器と、トヨタのランド・クルーザーに乗って戦っている彼らは、イスラエルが怯えるような敵ではない。イスラエルにとっての、もっとも大きな脅威はIS(ISIL)でもイランでもなく、ネタニヤフ首相が考えている、イスラエル1国家制の考え方だ、と彼は指摘している。
元参謀総長の職を、オルメルト政権下で6年間務め、ネタニヤフ政権下でも4年間務めた彼の、冷静な判断は聞くに値する。彼がいま、イランやIS(ISIL)は脅威ではなく1国家制の構想こそが脅威だ、と語ったことは、ネタニヤフ首相が暴走を、始めていることによろう。彼はソロモンの神殿を建設することを、夢想している、とも言われている。
いまの世界は、異常なまでの愛国的、あるいは民族的感情を抱く、国家代表が増加しているようだ。それは世界を、危機的状況に追い込んでいく、兆候であろうか。日本だけはその例外だ、とは言えまい。