『エルドアン大統領の冗談と本気』

2016年6月24日

 

 トルコは東西にまたがる国として、その地理的特徴を、世界にアピールしてきていた。そして、その事からトルコはEUのメンバーになりたいと思い、EU加盟の外交努力を続けてきていた。

 しかし、トルコはアジア側の国であり、ヨーロッパではないということと、イスラム国家であることがネックとなり、未だにEU加盟に至っていない。トルコ政府の高官に言わせると、トルコは1963年以来、既に53年間も、ヨーロッパの一員になる努力を、してきたというのだ。

 最近キャメロン英首相は『トルコがEUのメンバー国になるには、まだ30以上もの案件が検討されておらず、その検討が全て終わり、トルコのEU加盟が認められたとしても、それは紀元3000年のことであろう。』と皮肉っている。

 トルコ政府はEUへの、ビザ無し交渉を進めているが、全く進展が見られない。そのため、トルコ政府の高官は、90パーセント以上のトルコ国民は、ビザ無し渡航を、別に望んではいない、と言ってもいる。

 確かに、トルコの庶民は、物価高のヨーロッパに行って、買い物をしたり、観光を楽しむという余裕は無く、自国や近隣諸国で、観光を楽しむことの方を、優先しよう。しかし、トルコ政府の高官は、ヨーロッパがビザ無し渡航を認める方向にある、と言いながら何もやっていない、嘘つきだと非難し始めている。

 こうした雰囲気のなかで、エルドアン大統領はとんでもない、妙案()を提案した。それは、トルコ国民にEU加盟について、賛否を問うという、国民投票を実施するという提案だ。

 あるトルコ人の友人は笑いながら『トルコがEUに加盟を、認められてもいないのに、EUに加盟すべきか否かを、国民投票にかけるというのは、ジョークに過ぎない。』と笑っていた。

 イギリスではEUから抜けるのか留まるのか、ということが国民投票にかけられて、いま開票の真っ最中だが、それを真似て、国民的娯楽のイベントを、エルドアン大統領は提供しようというのであろうか。

 ただトルコ政府の高官は『難民がヨーロッパに行きたいというのであれば、彼らを自由に行かせるよう、国境を開く。しかし、ヨーロッパは彼ら難民を、受け入れるに際して、十分な対応ができるのだろうか。』と皮肉っている。多くの難民が今では、あまりにもひどい受け入れ対応に嫌気がさし、ヨーロッパから帰国したがっている、ということも事実だ。

 このトルコ政府高官の発言は、ヨーロッパ諸国に対する、恫喝でもあろう。もし、トルコが国境を開放すれば、100万人どころか、200万人300万人の難民が、ヨーロッパ諸国になだれ込むのだから。それはEUの崩壊につながろう。