以前、シリアの北部都市コバネで、クルド・ミリシアとIS(ISIL)が激しい戦いを行ったことがある。その結果は、クルド側の勝利というものだった。その裏には、イラク北部のクルド自治政府が、援軍ペシュメルガを、派兵したことがあった。
以来、シリアのクルドとイラクのクルドとの関係は、以前にも増して強いものになり、そのことが、シリアのクルド人たちに、自治区設立の夢を膨らませることとなった。
そして自治区設立の先には、シリア・イラクそしてトルコのクルドが、一体となってクルド連邦共和国を設立する、という希望が湧いてきた。このことはトルコにとっては、実に厄介な問題だ。もし、そういうことが進んでいけば、第一にはトルコでトルコ軍とクルドのミリシアとの間で、内戦が勃発することになる。
トルコ軍は現存のPKK(クルド労働党)との戦いに加え、トルコのクルド人と戦わなければならい。その他には、シリアやイラクからクルドのミリシアや、ペシュメルガ軍が参加する、という危険性がある。
シリアもしかりであり、いまの段階で既に語られている、シリアの分割構想が、現実味を増していく危険性があるのだ。シリアは多数派のスンニー地区と、クルド地区、そしてアサド大統領の所属する、アラウイ地区に分けられる、可能性が出てきている。
ロシアとアメリカがその可能性を、話し合っているのだ。ロシアにしてみれば、シリアのタルトース市やラタキア市などの、シリアにある既存の、ロシアの海軍基地や他の軍事基地を維持できればいい、ということであろう。
シリアが連邦制の国家になれば、シリアの分裂を救ったことになり、しかも、アサド大統領の体制を、維持で来たことにもなるのだ。これがアメリカとロシアとの間で、交わしうるぎりぎりの、妥協点なのかもしれない。
困ったシリアとトルコは、いまアルジェリアを仲介にしたり、イランを仲介にして、対クルド対処法と両国の、協力の可能性を探っている。
この交渉には、シリア側からはアサド大統領と親しい関係にある、ハーリド・アルアハマドという名のビジネスマンが、トルコのアンアカラ市を頻繁に、訪問して行っているようだ。
これと関連するのであろうか。最近、トルコのユルドルム首相は、シリアやエジプトとの関係を、改善する意向があることを、公式の場で語っている。この一連のニュースが出てくる以前に『クルドは結局国を持つことができず、アメリカのIS(ISIL)対応に利用されるだけだ。』という記事が掲載されたことがある。それがクルド人に与えられる運命であり、現実なのであろうか。
『クルド問題はシリア・トルコ共通和解の糸口に』
2016年6月20日