サウジアラビア政府はいま。多くの悩みを抱えているようだ。イエメン戦争を始めたのはいいが、何時どの段階で停戦し、終戦に持ち込むべきなのか、全く分からないのではないか。
イエメン戦争の戦費は膨らみ、石油価格の低迷と重なり、金満国家だったサウジアラビアは、外国にある資産を取り崩し、しかも、外国の銀行から借り入れをする、段階に入っている。
国内的には経済の悪化で、庶民の暮らしは少しずつ苦しくなってきており、失業率も高くなってきている。その事は国内と国外からの、反政府の動きが起こるという、危険性をはらんでいるということだ。
既に、IS(ISIL)はサウジアラビアをターゲットにする、と宣言しており、IS(ISIL)によるテロが、サウジアラビア国内で起きている。
サウジアラビアのこうした焦りが、対外政策にも影響し、サウジアラビアのアーデル・ジュベイル外相はアメリカに対して、シリアのアサドを打倒するよう、強く要請した。これとは別に、アメリカからの要請もあり、現段階ではサウジアラビアはシリア攻撃に、参加しなければならなくなる、可能性が出てきているのだ。
サウジアラビアの空軍はこのため、トルコのインジルリク空軍基地に、戦闘機を送り込み、トルコとの合同訓練も行っている。それは述べるまでも無く、シリア空爆を想定してのものだ。
サウジアラビアがいま、強硬にアメリカに対して、シリアのアサド体制打倒を要求しているのは、その少し前に、アメリカの外交官51人が、シリアに対する強硬対応を要求したことに、タイミングを合わせているのであろう。
サウジアラビアがアサド体制の打倒を急ぐのは、アメリカとロシアとの間で、シリアを三分割する案が、具体化してきているからであろう。それはシリアにクルド自地区、スンニー自治区、アラウイ自治区を作り、それを連邦にしていくという考えだ。
サウジアラビアはアメリカに対し、空爆の実施、ノーフライ・ゾーンの設定、セイフ・ゾーンの設定、ノ-ドライブ・ゾーンの設定を要求している。つまり、できることは全てやってほしい、ということであろう。
オバマ大統領はこのサウジアラビアの要求に対して、何も応えていないが、ロシアは早速厳しい反論よせている。ロシアは『アメリカは2014年以来、シリアからも国連からもOKを得ないで、これまで空爆を重ねてきており、その犠牲者の数は甚大だ。いま必要なのは、国連などを通じた、政治対話によるシリア問題の解決だ。』と正論を述べている。