カダフィ大佐の地元であるシルテ市は,IS(ISIL)が占領してから久しい。カダフィ大佐の時代に、 大分インフラが整備されていたこともあり、IS(ISIL)はこの街を、シリアのラッカ市に次ぐ、首都と決めていた。
そのため、多くのIS(ISIL)の戦闘員や、その家族がこの街に、移動してきていた。同時に、このシルテ市は西の首都トリポリと東の主要都市である、ベンガジのちょうど中間に、位置していることから、極めて重要な戦略拠点だ、とも言われてきている。
従って、この街を奪還するということは、リビア統一軍にとっても、リビア統一政府にとっても、極めて重要だったということだ。それが今回達成され、シルテ市はリビア統一政府軍の支配下に、置かれることになった。
シルテ市の住民は112万人であったが、IS(ISIL)が侵入して以来、多くの住民が市外に逃れ、現在の段階で街に留まる住民の数は、3万人程度にまで減少していた。その残存する住民を盾にして、IS(ISIL)は抵抗戦を戦おうと思っていたのだが、うまくいかなかったということだ。
リビア統一軍は大砲や戦車、ミサイルでIS(ISIL)に攻撃を加え、空からの空爆と、海上からの砲撃を繰り返し、しかも、市街戦にも打って出た。結果的に、IS(ISIL)側には対応するだけの武器と、戦闘員が不足していたのであろう。敗北に至ったのだ。IS(ISIL)側に残されていたのは、車爆弾による特攻攻撃だったが、3度試みても大きな被害を、リビア統一軍側に与えることは、出来なかった。
IS(ISIL)はリビアの各地に侵入しており、シルテ市が陥落したから、それでリビアとIS(ISIL)との戦いが終わった、というわけではない。これからも両者の戦いは続くのだが、IS(ISIL)側は今回の戦いで、相当な精神的ダメージをこうむったことは、否定できまい。
IS(ISIL)側は今後、リビア南部での戦闘に重点を置くのか、あるいは海岸線に重点を置き続けるのか、見ものだ。海岸線を失えば、逃亡するにしろ、新たな戦闘員が到着するにしろ、相当困難になろう。武器の搬入についてもしかりだ。