『完全に外れたエルドアンの予相と期待』 

2016年6月12日

 

 ムハンマド・アリー・クレイといえば、私の年齢(68歳)前後の人なら、誰でも知っている、スーパースターだった。彼は黒人だけではなく、全米の人たちをとりこにし、世界的なボクシング・チャンピオンとして君臨した。

 彼の軽やかな足捌きを、フアンは蝶が舞っているようだ、と評した。しかし、その彼ですら年齢には、勝てなかったのであろう。次第に身体的不自由を感じるようになっていき、ついには死亡した。

 この往年の世界的な大スターの葬儀に、トルコのエルドアン大統領は出席する、と言い出した。国内外の耳目を集めるのには、絶好のチャンスと考えたのであろうか。しかも、そればかりではなく、種々の小細工も考えていたようだ。しかし、それはことごとく、拒否されることとなった。

 エルドアン大統領はトルコのイマーム教育の学校、ハテップ・スクールを卒業していることから、コーランの独唱は得意とするところだ。それを、ムハンマド・アリー・クレイの棺の前でやろう、と考えていた。世界中のムスリムの指導者たちが、集まっている中で、コーランの独唱が出来れば、最高の宣伝となろう、ということであろう。

 加えて、ムハンマド・アリー・クレイの遺体に、彼は白い布をかけたかったのであろう。報道によれば、棺の中に衣装を入れたかった、というような表現になっているが、これは実は遺体を洗浄した後、白い布で包み、埋葬するのがイスラム教のやり方なのだ。しかし、このエルドアン大統領の希望も、簡単に拒否されてしまった。

 エルドアン大統領が失望したことは、述べるまでもあるまい。実は、エルドアン大統領がムハンマド・アリー・クレイ氏の葬儀に、列席することを考えたのは、そこで同じ黒人のオバマ大統領が出席し、対話の機会が得られる、と踏んでいたのではないだろうか。オバマ大統領は葬儀に出席しなかった。

 結果的に、激怒したエルドアン大統領は、埋葬の場に参列することなく、日程を切り上げて、帰国している。相当怒りが激しかったのであろう。加えて、彼のボデー・ガードとアメリカの警備側とが、いざこざを起こしてもいる。自慢にならない光景なのだが、その状況はインターネットの動画で、各地からばら撒かれることになった。

 どうもエルドアン大統領の運気は、下降線を辿り始めているようだ。それは、今後どんどん悪化していくかもしれない。アッラーのみの知るところだが。