アラブ諸国は押しなべて、『アラブの共通の敵はイスラエルだ。』と過去にも現在も叫んできている。そのことが、シリアのアサド大統領に対する支持や、サダムフ・セイン・イラク大統領、あるいはリビアのカダフィ大佐に対する、アラブ大衆の支持に繋がっていたのだ。
エジプトの故ナセル大統領が、アラブを代表する指導者になりえたのも、まさにこの一点によるものだった。当然、このナセル大統領に対して、激しく嫉妬していたサウジアラビアの国王は、同じようにイスラエルを敵視する発言を、繰り返してきていた。
その通りであれば、何の不思議もないのだが、ここに来てとんでもない情報が、イスラエルから飛び出してきている。イスラエルのエルサレム・ポスト紙は、サウジアラビア政府が2006年に起こった、第二次レバノン・イスラエル戦争時に、レバノンに関する情報を、イスラエル側に提供していたというのだ。加えて、サウジアラビア政府はガザのハマースに関する情報も、イスラエル側に提供していた、と暴露した。
本来であれば、イスラエルにとって影の味方であるはずの、サウジアラビアのアラブに対する、裏切り行為の情報は、ばらさないはずなのだが、何故それを行ったのであろうか。
レバノンのヘズブラについては、彼らがシーア派であることを、イスラエルに対する情報提供の、理由にすることができるかもしれないが(?)、ハマースはスンニー派であり、サウジアラビアと同じ宗派なのだから、その理屈は通じまい。
サウジアラビアは述べるまでもなく、アメリカと一体の親米国であり、これまで多くの情報を共有してきているし、陰ではアメリカのアラブ諸国攻撃を、支援してきていたことは、周知の事実だ。
加えて、サウジアラビアはイスラエルとの間でも、情報交換や、軍事協力をしてきている、と言われていた。サウジアラビアの空軍基地は、イスラエルの空軍がイランを攻撃する際には、利用可能な合意ができていた、とも言われているのだ。
しかし、だからと言っていまの段階で、イスラエルがサウジアラビアとの秘密の協力関係を、ばらすのは何故なのか、という疑問が浮かぶ。あるいはそれは、サウジアラビアとアメリカとの関係が、劣悪な状態になってきているからかもしれない。
サウジアラビアの副皇太子ムハンマド・ビン・スルタンは、ことのほか強硬であり、民族派だと言われている。アメリカに対しても牙をむいて、自己主張することがあり、アメリカ政府も手を焼いているというのだ。
イスラエルが暴露した、サウジアラビアのイスラエルとの、情報交換の秘密は、アラブ諸国政府に少なからぬショックを、与えたことであろう。そうなると、サウジアラビア政府の信用は、大幅に低下するということではないのか。