ドイツはナチのホロコーストの、暗い影が影響し、その後、世界の民族に開放された国になっていた。しかし、あまりにも多くの外国人が、非合法に入国してきたために、国内は混乱の極みに達している。外人による性犯罪や暴力事件、窃盗事件も激増している。
このため、ドイツ政府は意に反して、外国人難民に対する対応を、変更させつつあるようだ。それは仕方のないことであろう。いまドイツにいる難民の数は、シリア人にイラク人、アフガニスタン人に北アフリカからの難民を合わせると、100万人を超えているのだ。それ以前に入ってきた外国人も相当数いる。
難民問題で頭を抱えるメルケル首相は、トルコの強圧的な要求を前に、頭を抱え妥協を続けているが、それはドイツだけではなく、EU諸国全体にも影響しているのだ。トルコ人に対するビザ免除問題、トルコのEU加盟などがあるのだ。
そうしたなかで、ドイツでは朗報が聞かれ始めている。それはドイツに入国した難民たちが、自主的に帰国し始めているということだ。だがシリアが安全になったからではなく、あくまでも難民の事情による。シリアに家族を残して、出稼ぎ的な難民となったある男性の場合は、妻や家族からの帰国呼びかけの、電話を何度も受け、帰国を決めたということだ。
また、犯罪や非合法を理由に、国外追放になっている難民もいるが、自主的に帰国するも難民の数は、9万人から10万人に達しているということだ。2015年には37220人が帰国し、2014年には13574人が帰国している。そして9280人は強制退去で出国させられている。これらの多くは、戦争を逃れるか、貧困からの脱出が目的なのだ。
バルカン諸国はもっと厳しい措置を取っており、入国を禁止し、国内にとどまる者に対しては、強制退去措置を取っている。バルカン諸国のような、経済的な余裕のない国にしてみれば、仕方のない措置であろう。
それでも、バルカン諸国を通過して、ヨーロッパに入った難民の数は、3月だけで2万人、4月には16000人に達していた。
あるところで私が講演した折に、難民問題がEUの崩壊につながる、という話をしたところ、それには異論がある、と言い出す人がいた。その人は出来上がったものは、そう簡単には壊れないという信念の、強い人なのだろうと思った。
難民を受け入れるにあたっては、その費用負担や、難民の受け入れ人数の振り分け、犯罪防止、難民が絡む麻薬の問題と、これまでのように、自由な国境通過を許していたのでは、難民の明確な把握ができなくなってしまう。国境通過を厳しくすることは、結果的にEUの解体につながる、と私は考えたのだが。