アラブの新聞が『バグダーデイの少年兵』という記事を掲載した。延々とこの子供たちが受ける、軍事訓練や参加した作戦について、述べられている。このバグダーデイの少年兵は、15歳前後のまさに子供たちなのだ。
彼らはバスに乗せられ、『勝利の歌』や『天国への道』など、軍歌を歌いながら、モースルから1時間の距離にある、テル・アファルのオマル・ビン・アブドッラー軍事学校に到着する。
そこでの訓練は相当厳しいもののようだ。まずファジュルの礼拝(未明の礼拝)に始まり、軍事訓練を受け、その後に朝食、少しの休憩の後、軍事訓練が行われ、その後、昼食となっている。
午後の教科は教室での授業だが、主にシャリーア(イスラム法)の講義を受ける。もちろん、そのシャリーアはイスラム原理主義のシャリーアだ。訓練期間中に20ページの、コーランの暗記が義務付けられているが、あまり暗記に苦労はしないようで、それ以上のページを、暗記する者が少なくない。
約1ヶ月から2ヶ月の訓練を受けた後、彼らには携帯電話が与えられ、軍服も支給され、短い期間の帰宅が許される。彼らに支給される月給は50ドルから120ドルで、能力に応じて支給額が異なるようだ。また、給料以外に物資の支給も受けているが、それは家族に送られるのであろう。
これで少年兵は立派に通用する、イスラム原理主義の兵士になるわけだが、問題は彼らの思考が、完全にイスラム原理主義に、洗脳されてしまうことだ。やがては、IS(ISIL)がイラクやシリアから、追放されるときが来るであろうが、彼ら少年兵の脳に刻まれた、イスラム原理主義の思想、価値観からは、抜け難いであろう。
言ってみれば、IS(ISIL)が行っている少年兵の訓練は、戦闘に参加させることも目的ではあるが、同時に時限爆弾の効果を、持つということだ。数年が経過して、イラクやシリアが安定化したときに、彼ら脳裏に生め込まれた記憶は、彼らをして一匹狼の、テロリストに蘇らせるのだ。
戦争の後遺症が抜けず、多くのベトナム戦争に参加したアメリカ兵が、帰国後に国内で殺人事件などを犯している。バグダーデイの少年兵たちは、それ以上に、通常の人間に戻すことが、大変なのではないか。この問題に世界はどう、対応していくのであろうか。
トルコのイスタンブール市の、ラジオヘッドというレコード店で、アルコールを飲みながら、音楽を楽しんでいた若者たちが、棍棒やビンを持った、20人ほどの暴漢に襲われている。暴漢たちは『ラマダンにアルコールを飲むことは恥だ。』と叫んでいたということだ。同じような事件が、将来、バグダーデイの少年兵たちによって、起こされることが懸念される。