IS(ISIL)はリビアの海岸都市シルテ市を、シリアのラッカ市の次の、首都と宣言していた。このため、巨額の資金と戦闘員が、シルテに入ったと伝えられていた。結果的に、シルテは完全にIS(ISIL)の、支配下にある。
これに対し、欧米が作った統一リビア政府は、本格的な攻撃をシルテ市の、IS(ISIL)に仕掛け始めている。陸上からは砲撃が行われ、空軍機による空爆、海上からは艦砲射撃が、行われている。
統一リビア政府のスポークスマンは、これでIS(ISIL)が海から逃亡することも、陸から逃亡することも、不可能になった、と語っている。確かにそうであろう。それではこれでIS(ISIL)は、リビアで全滅してしまうのかというと、そうでもなさそうだ。
リビア統一政府が予測するのは、IS(ISIL)が今後、リビア南部の石油地帯に攻撃をかけ、支配を試みることと、ミスラタ市やトリポリ市に対する、攻撃を強化するだろう、ということだ。
リビアにはいま、5000人のIS(ISIL)の戦闘員が入っている、と西側情報部員によって推測されているが、その戦闘員はここまで来れば、まさに死に物狂いの抵抗を、試みるであろうことは、容易に想像できよう。
今後のIS(ISIL)の動きは、リビア南部の石油地帯を攻略することと、そこをアフリカ中央部への、進出の拠点とすることではないのか。IS(ISIL)はその意味では、リビアでの戦闘であまり犠牲を、払いたくないのかもしれない。
さて、リビアには現在、三つの政府が存在するが、東の政府の対応はどうなのであろうか。ハフタル将軍率いる東リビア政府は、シルテの攻防戦に、全く関わっていない。
ハフタル将軍の目算は、統一リビア政府がIS(ISIL)との戦闘で、戦力を消耗させた後に、台頭するということかもしれない。そうすれば、統一リビア政府を打倒できる可能性は、高まるからだ。しかし、もし統一リビア政府が大勝利した場合、ハフタル将軍はどの面下げて、表舞台に出て行くのであろうか。
統一リビア政府側には、ミスラタのミリシアがついている。このミスラタのミリシアは、カダフィ大佐を最後に追い詰めて倒した、戦闘集団なのだ。ミスラタの住民は押しなべて、敬虔なムスリムであり、勇猛果敢なことで、知られている。
賢い計算が時には勝利をもたらそうが、時にはその逆で、大敗北をもたらすこともあろう。ハフタル将軍の場合は、そのどちらになるのか れからが見ものだ。