サウジアラビア政府はいま、3つの困難に直面している。そのことが、サウジアラビアの王家にとって、大きな不安となっていることは、確かであろうと思われる。
第一の問題は、サウジアラビアがリードしてきた、OPECが実質的にその存在価値というか、影響力を失ってきていることだ。かつては世界の石油価格を、OPECが決める状態にあったものが、いまでは石油価格に何の影響力も、発揮できなくなっている。
先に開かれたOPECの会議で、サウジアラビアの石油大臣ハーリド・ファリーフ氏は『これまでのような方法で、石油価格を操作することは、出来なくなっている。いままでのような状況が、回復されることもあるまい。』と語った。
実際にその通りであろう。サウジアラビアが行ってきた、石油価格の調整機能(スイング・プロデウーサー)は既に、機能しなくなっているのだ。それどころか、石油は戦略物資から、金融市場の一取引商品に、様変わりしているのだ。このため、石油の価格は需要と供給の、バランスによって決まるのではなく、世界の投資家たちの考えに、左右されるようになっている。
OPECが石油生産を、凍結しようが削減しようが、それが直接的な影響を、価格に及ぼすことは、困難になっているのだ。
第二の問題は、サウジアラビアが抱える、王家の存続にかかわる問題であろう。サルマン国王の子息ムハンマド副皇太子が、実権を持つようなり、彼の差配が必ずしも、効果を生み出していないことだ。ムハンマド副皇太子は若いこともあり、早急に成果を求めようとしている。脱石油計画はまさにその典型であろう。
現在でもほとんどの労働を、外国人に依存している状況で、サウジアラビアが産業国家になって行くことは、ほとんど不可能であろう。アラムコの株式の一部開放も、あまり大きな効果を、生み出さないのではないだろうか。そうすることが、かえってアラムコを苦しい状況に、追い込んでいくのではないのか。
焦りすぎる国内統治は、治安面でもあらわれ、多くの国民を圧迫し、死刑に処していることも、今後の不安につながって行こう。そうした政策はIS(ISIL)などの介入の状況を、生み出していくことになろう。失業問題もしかりであろう。若者が仕事に就けないことは、イスラム原理主義に走らせる、主な要因であることは、他の国も同じだ。
第三の問題は、サウジアラビアとアメリカとの関係であろう。アメリカ政府は資金難からか(?)最近、サウジアラビアが9・11事件に絡んでいた、という印象を与える政策を取り始めている。在米サウジアラビア大使館の一員が、テロリストたちに資金を、与えていたというのだ。
このことは、9・11事件の報告書のなかにも、記載されているが、そのサウジアラビアに関する部分、25ページを政治的判断から、アメリカ政府は公開しないで来たのだが、ここに来て、下院議会の突き上げがあり、公開する方向に動いている。
サウジアラビアが9・11事件に関与していた、とはとても思えないのだが、その25ページの報告部分が、公開されることになれば、サウジアラビアには大きな黒丸が、付けられることになろうし、犠牲者の遺族たちによる、補償訴訟も激しくなろう。
サウジアラビア政府はもしアメリカが、この調査報告書の25ページを公開するのであれば、在米資産を引き上げると圧力をかけ、オバマ大統領は対応に、追われている。