いまドイツは難民問題で、深刻な状態に陥っている。それは、ドイツに限らず他のヨーロッパ諸国、なかでもアラブやアフリカ諸国、アジア諸国などを植民地支配した国々にとっては、大きな問題となっている。
フランスなどは地中海を超えれば、北アフリカ諸国であり、ほとんどの国々がフランス語を公用語にしていることもあり、フランスに移住してきても、事欠くことはない。しかも、親戚友人がそこには、待っているのだ。
フランスでは国民人口の、10パーセント程度が、北アフリカから来たムスリム人口だ、と言われており、彼らに対する差別が、社会問題、暴動を起こしている。これを抑えきることは、とても出来ないだろうから、フランス人はそれに慣れていくしかない、ということになる。
ドイツの場合は最大の問題は、第二次世界大戦後に受け入れた、労働力としてのトルコ人だった。彼らは労働不足問題が落着した段階で、帰国させられるのだが、結局はドイツに、Uターンして来て定着してしまった。
シリア難民はこのトルコ人の居住問題を、増幅させている。現在、ドイツには450万人のムスリムが居住しており、これはドイツ人口の5パーセントに、当たるということだ。
このうちの45パーセント、190万人がドイツ国籍を取得している。彼らは自国の国籍も保持しており、その割合は55パーセントだということだ。つまり、55パーセントのムスリム・ドイツ国民は、二重国籍所持者だということだ。
彼らのうちの90パーセントは、敬虔なムスリムだが、決してイスラム原理主義者や、過激派ではないということだ。
いま、ドイツ国民の46パーセントが心配しているのは、ムスリムが次第に保守的になって行き、原理主義的に変わっていくことだ。このためドイツ国民のうち30パーセントが、ムスリマ(女性イスラム教徒)がヘジャーブを着用することに、反対している。
特に学校では、ヘジャーブを着用させたくない、と考えているということだ。それが許されれば、ドイツ人とムスリマとの間に、完全に文化的、思想的、宗教的な壁が、出来上がってしまうからだ。この学校ではヘジャーブ禁止、ということについては、55パーセントのドイツ人が、賛成している。
日本政府はシリア難民の一部を、受け入れる方針のようだが、果たして、受け入れた後に生ずるであろう問題に対する、対応案はあるのだろうか。単に国際的な要求や、人道主義だけで受け入れるのは、後に大問題になろう。