『ユダヤ人団体がムスリムの米入国禁止に反対運動』

2016年5月14日

 

 在米のユダヤ人9団体が、ムスリムのアメリカ入国禁止の動きに、反対運動を起こした。ADL、保守再建運動、ユダヤ女性運動などといったアメリカのなかの主なユダヤ人団体がその中心をなしている。

 この運動はバージニアの共和党議員、ドン・ベイヤー氏によって、提唱されたものだ。その彼の呼びかけに対して、ユダヤ人各種団体が、応えたというものだ。これにはユダヤ教のラビや保守系の団体も加わっており、大きな運動に成長していく、可能性があるものと思われる。

 そもそもの起こりは、アメリカ大統領候補共和党の、トランプ氏の提案が原因であろうか。彼はアメリカからムスリムを締め出し、ムスリムを入国させるなと息巻いている。事実アメリカはシリアの難民受け入れに対して極めて消極的であり、ヨーロッパ各国とは雲泥の差がある。

 しかし、ユダヤ人団体は、『アメリカは憲法で外国からの、移民を受け入れることが謳われており、アメリカの歴史はその偉大な記録を、留めてきている。』と主張している。

 アメリカのユダヤ人団体が、潜在的に敵であるアラブのムスリムを、擁護するような動きに出ているのは、何故であろうか。それは、ドイツで起こったホロコーストや、ロシアで起こったポグロムなどのような、ユダヤ人の悲惨な体験、ユダヤ人の歴史から出てきたものではないのか。

また、アメリカ国内で静かに拡大している、反ユダヤの危険性を、察知しているからではないのか。共和党の大統領候補トランプ氏や、民主党の大統領候補サンダース氏などが提唱する、貧富の格差に対する非難は、言葉を変えて言えば『ユダヤ人が富を独占している。』ということなのだ。

アメリカのなかのアングロサクソン、プロテスタント、白人たちの中間層や低所得者層はユダヤ人に強い敵意を抱くとようになっているのだ。KKK組織などはその典型であろう。

アメリカのユダヤ人たちは、ムスリムに対する差別と敵意は、『明日はわが身』という不安から、この動きを起こしたのではないのか。