人権委員会が最近発表した、トルコ・シリア国境のシリア難民に関する報告は、トルコにとって極めて不名誉な、内容となっている。それは、トルコの国境警備兵が、シリア難民に対して、敵対的な対応をしている、ということだ。
具体的に言えば、トルコの国境警備兵はシリアからの難民のトルコへの入境を阻止するために、銃器を使っているといことだ。難民はトルコの国境警備兵に撃たれ、あるいは殴打され、5人が既に死亡したが、そのなかには、女性や子供も含まれていた、ということだ。
これは国際法に違反する対応であり、難民は受け入れられて、しかるべきなのだ。だが、トルコにしてみれば、既に250万人とも270万人とも言われる数の、シリア難民が入国しているため、もう対応は限界だということであろう。
加えて、EU諸国なかでもドイツは、トルコに対してシリア難民の、EU諸国への流入を、トルコ国境で阻止してほしい、と主張している。EU諸国にとっても、シリア難民問題は重大であり、このままシリア難民の流入が続けば、EU各国は国境通過を厳しくし、結果的に、EUそのものの、解体につながる、危険性があるのだ。
EUはこのために、トルコにシリア難民の、トルコ国境でのEU入りを、阻止するよう要求しているわけだが、トルコ側はこれに対し、EU側に資金的援助(60億ユーロ)と、EU加盟やビザ免除を要求している。
トルコは昨年8月に、シリア難民の流入を禁止し、厳しい対応を国境警備兵に、通達しているのであろう。しかし、シリア国内はいまだに、戦闘が続いており、とても平和に暮らすことは、出来ないのだから、難民がトルコに押し寄せて来るのは、当然であろう。
ここで問題は、トルコの措置は過激すぎるし、非人道的であることは分かるし、それは非難されてしかるべきではあろうが、EU諸国は自分の手を汚さずに、何とかシリア難民の流入を、阻止しようと考えているということだ.つまり、EU諸国はトルコに対して、汚れ仕事を全部押し付けている、ということではないのか。
今回発生した、シリア・トルコ国境での、トルコ国境警備兵による、シリア難民に対する、銃撃と暴力は、実はEU諸国がトルコに対して、暗黙に、あるいは秘密裡に、グリーン・ライトを灯したからではないのか。シリア難民に対する、トルコ国境警備兵による、殺傷事件の責任は、EU側にもあるということだ。