『トルコは内憂外患エルドアンの顔曇る』

2016年5月 8日

 

 エルドアン大統領の顔に、精彩が無いように感じられるのは、片腕のダウトール首相を更迭した、結果であろうか。もちろん、切られた側のダウトール前首相の顔にも精彩は無い。

 エルドアン大統領は首相の再選を急ぐよりも、大統領制を一日でも早く正式なものにしたいようだ。そのため、いままで噂されていた、議員選挙前倒し案を引っ込め、憲法改正への国民投票を、実施したいと言い出している。

 そうなれば、まさにエルドアン大統領による、独裁体制が確立される、と在野の人士は語り始めているが、誰も止めることは出来まい。ヨーロッパ諸国はエルドアン大統領をなだめながら、何とかシリア難民をトルコ国内に、留めておいててほしいため、強い非難は避けているし、独裁よりもテロ対策を優先する、とも言い出しているようだ。

 エルドアン大統領は彼の強引なやり方が、シリア難民やテロに対する対応策、と主張しているが、その傾向はヨーロッパでも然りだ、難民で悩むヨーロッパ諸国では、次第に民族派、右翼勢力が伸張し、外国人なかでもイスラム教徒を、排斥する動きが、激しくなってきている。

 しかし、トルコ国内事情はエルドアン大統領を、楽観させてはいないのではないか。トルコ南東部では、連日PKKIS(ISIL)による、テロが繰り返されている。それはトルコの南東部ばかりではなく、首都アンカラ市やイスタンブール市、アンタルヤ市やイズミール市でも、起こっているのだ。

 マスコミ関係への強引な弾圧政策に反発する、野党各党によるデモも、不安の種であろう。いまのところ、警察による弾圧でデモを阻止しているが、それにも限界があると思われる。先日はジュムフリエト紙の編集長を狙った、暗殺遂事件が白昼に起こっている。

 これでは観光収入の伸びは、期待できないだけではなく、減少していこう。貿易も世界経済の低迷にあわせ、エルドアン大統領の強引な進め方が、ビジネス界全体に沈滞ムードを生み出しており、減少傾向にある。

 こうした沈滞ムードのなかで、エルドアン大統領はアメリカがかつて実施したような、経済復興のための巨大プロジェクトの、推進を打ち上げている。その一つは第二ボスポラス運河計画であり、巨大な空港をイスタンブールに建設する計画だ。この空港は中東地域では最大規模のものであり、工事は既に大分進んでいる。

 大型の高級マンションも林立しており、国内の金持ち層や、外国人向けに販売される、予定になっている。加えて、ボスポラス海峡周辺での海底トンネル工事や、架橋も進められている。

 そのこと自体に反対はしないが、資金は外国からの借り入れが大きいため、返済に苦慮する時期が来よう。そうなればトルコ・リラは減価し、エネルギー輸入には外貨が不足しよう。それにもかかわらず、首都アンカラ市には、540万ドルもかけて、巨像が建てられるということだ。エルドアン大統領に対しては、もう打つ手が無い、最終段階に入っているのか。