おごれるものは久からず、とはこのことであろうか。いまIS(ISIL)は極めて厳しい状況に、シリアでもイラクでも、追い込まれている。影の支援者であったアメリカが、最近では本格的にIS(ISIL)に対して、空爆を行うようになっているし、ロシアは以前からそうだ。
加えて、これまでスポンサーであったトルコも、IS(ISIL)に対して厳しい対応を、執るようになってきている。そうは言っても、トルコとIS(ISIL)は、未だに地下水脈で、通じているようだが。
イラクではイラク軍が、ファルージャ奪還作戦を遂行しており、モースル奪還作戦も、同時進行で行われている。このうちのモースル奪還作戦には、クルド自治政府のペシュメルガ軍も、参戦している。
どうやら、こうした反IS(ISIL)側の、連合軍の攻撃に対して、IS(ISIL)は打つ手が無いのかもしれない。流れてくるのは、IS(ISIL)が大量処刑を行ったとか、以前行った大量処刑の埋葬現場が、発見されたという種類のニュースが、ほとんどだ。つまり、非戦闘員に対する攻撃だけだ。
そうしたなかで、注目すべきニュースは、シリアとトルコの国境地帯での、IS(ISIL)とトルコ軍、あるいは、IS(ISIL)とクルドを含む、シリアの各派の戦闘だ。なかでも、トルコ国境のトルコ軍との戦闘は、相当厳しくなってきているようだ。それは、IS(ISIL)がイラクやシリアから逃亡するに際して、トルコが最も有力な経由地に、なっているからであろう。
トルコにしてみれば、いまだに地下水脈で通じている、IS(ISIL)との関係を、完全に破壊したい、とは考えていまい。当面のトルコにとって重要な軍事作戦は、クルドのPKKを潰すことであろう。IS(ISIL)はこの作戦で、まだ利用できる余地があるからだ。
トルコ政府にしてみれば、IS(ISIL)がトルコ国内に、逃げ込んで来ても、その後、ヨーロッパなどに移動してくれるのであれば、大きな問題ではあるまい。それどころか、トルコが唯一のIS(ISIL)との秘密交渉の、窓口になれるのであれば、それは政治・外交上のメリットがあるだろう。