欧米の支援や、国連のバック・アップで、リビアに統一政府が誕生したが、その後、このリビア統一政府は、あまりうまく機能していないようだ。東リビア政府は、これまで国際的に認知されていたのだが、統一政府が出来ると、重要性を低下させている。
そのことからくる不満が、東リビア政府にはあるし、なかでも東リビア政府の軍責任者である、ハフタル将軍は激怒していることであろう。彼は20年もの長きにわたって、CIAに擁護されていたのだから、新しいリビアでは、しかるべき地位が保障されている、と思っていたものと思われる。
リビア統一政府のもたつきと、リビア国内各部族の不満が、ここに来てIS(ISIL)支持に、向かわせ始めているようだ。リビア最大の部族である、アウラード・スレイマーン部族や、ワルフェッラ部族はIS(ISIL)に対して、バイア(服従)を誓っている。
加えて問題なのは、カダフィ大佐の出身部族である、カザーズ部族が同じように、IS(ISIL)にバイアをしたのだ。こうなってくると、カダフィ体制再現の夢が、一部の部族の間に、広がるかもしれない。そしてそれは、現在のように混沌とし、国民が生活に苦しむなかでは、それ以外の部族の人たちからも、支持を得るかもしれない。
トリポリを中心とする、ミスラタなどの部族は、あくまでもIS(ISIL)に対抗して、戦い続けると言っているが、あまり戦果は上がっていない。素人集団の戦略では、IS(SIL)を敵に回しては、通用しきれないのかもしれない。
もちろん、これらの反IS(SIL)部族集団は、武器や弾薬が不足しているから、苦しい立場にあるのだ、と説明してはいるが、それだけではあるまい。
これから先、カダフィ体制再現に向かうのか、それはIS(SIL)との関係をどこまで進めていくのか、いまリビア南西部で幽閉されているカダフィの二男サイフル・イスラムは動き出しうるのか。
リビアの状況の推移は、もう少し時間が経たなければわからないが、いずれにしろ、新たな段階が始まったことは事実だ。欧米軍がどう軍事的に関与してくるのか、欧米軍によるIS(ISIL)に対する軍事攻撃は、本物なのかもまだ不明だ。