アメリカのCIAが、アメリカ国内で20年も支援してきた人物、カダフィ時代の軍人ハフタルは、2011年の革命でリビアに帰国し、今では確固たる地位を、トブルク政府のなかで認められている。
彼はこれまで、国際的に承認されてきた、リビア東部のトブルク政府の、軍参謀長として、活動してきた。彼の持つ空軍力や陸軍力は、リビア東部でのIS(ISIL)の伸長を阻止するうえで、大きな役割を果たしてきていたと言えよう。
しかし、ここに来てリビアの状況は一変した。欧米が立ち上げた、統一リビア政府なるものがファーイズを首相として、リビアに送り込まれたのだ。この統一リビア政府に対して、欧米はリビアの海外凍結資産670億ドルを、解凍してもいいと言い出し、石油の輸出についても、統一リビア政府だけが正式に、認められるとした。
つまり、欧米は資金的にこれまであった、二つの政府を締め上げることで、リビアの二政府を、統一リビア政府に従わせよう、という考えだ。勿論、それは欧米の利益に、かなっているということだ。
こうした状況変化に対し、東部政府のハフタル参謀長が動き出した。彼はリビア東部の石油を支配する動きを始めたのだ。リビア東部の油田を支配し、輸出しようという目算だ。もちろんそのことは、石油の輸出で得た資金で、兵器を買い込み、リビア全体を支配下に置く意図からであろう。
以前に、リビア東部からインド船籍のタンカーが、石油を輸出しようと動いたが、それはアメリカなどの圧力で抑え込まれ、輸出先国ではなく、リビアに戻されている。
アメリカ政府は今後、ハフタルの動きを監視し、必要な対応策をとっていく方針のようだ。ハフタルが石油輸出で資金を得て、兵器を大量に買い付けたのでは、欧米のリビアに対する目論見が、外れてしまうからだ。
しかし、欧米の創り上げた統一リビア政府が、今後、どれだけの力を持つことができるのかは、いまだに不明だ。トリポリ政府は統一リビア政府を支持する側に回ったが、トリポリ政府の全てがそうなったわけではない。トリポリ政府内部にも、欧米の強引な進め方に対して、反発する者たちもいるのだ。
こうなると案外、ハフタルに勝ち目があるのかもしれない。あるいは、欧米は彼に対して、妥協のカードを切るかもしれない。いずれにしろ、統一リビア政府は動き出したばかりであり、トリポリにあるこれまでの省庁ビルも、一部が統一リビア政府に、明け渡されたに過ぎないのだ。
新たなリビア内部の動きの中で、IS(ISIL)が勢力を拡大できるかというと、そうでもないようだ。IS(ISIL)は一進一退というほどの、動きは出来ていない。