ムバーラク大統領の時代には、エジプト・ポンドはドルに対して、5ポンド台のイメージが続いていた。このため5ポンドから6ポンド、そして7ポンドへと推移していくと、少なからぬ不安を感じるのは、私だけではあるまい。
それほどエジプトの景気は悪いのか、ということになるが、エジプト・ポンドの主な下落要因は、外貨準備高の減少によるのであろう。このところエジプトの外貨準備高は、減少傾向にあるのだ。外貨準備高は360億ドルから、最近では165・6億ドルに減っているのだ。
何がエジプトでドル高を、生み出したのかというと、観光収入の激減、外人投資家の資金引き揚げにあろう。このため、輸入業者はブラック・マーケットでドルを買わなければならなくなり、ブラック・マーケットのドル価格はエジプト・ポンドに対して値上がりし1ドルが10・10ポンドに達している。
これに対して、中央銀行のドルの売値は、8・8ポンド前後で推移している。つまりブラック・マーケットと中央銀行(公定レート)との間には、2ポンドもの差があるということだ。それは公定レートで見た場合、およそ、25パーセントの差、ということになろう。
しかし、中央銀行や金融専門家はブラック・マーケットの業者とは真っ向から対立する見方をしている。第一には、外国からの投資資金が、再度エジプトに流れ込んで来ているからだ。
加えて、サウジアラビアのサルマン国王のエジプト訪問で、幾つもの希望的な見通しが出てきている。サルマン国王はエジプトに対し、200億ドルの支援をする予定になっている。それは今後5年間にわたる、石油部門への投資だ。
加えて、150億ドルのシナイ半島開発投資、そしてサウジアラビアのビジネスマンによる、40億ドルの投資が予想されているからだ。これはスエズ運河周辺開発、電力開発、農業開発などが、見込まれている。
従って、サウジアラビア政府やビジネスマンによる、こうしたエジプトへの投資が、明らかになってくれば、ドルの価値は下がり、逆にポンドの価値が上がるということになる。金融専門家はこの点から、闇ドル業者が大損をするだろう、と予測しているのだ。
つまり、今後当分の間、エジプト・ポンドの対ドル・レートの推移から、目が離せない、ということであろう。