アゼルバイジャンとアルメニアとの間には、1990年代の初めから飛び地ナゴルノカラバフをめぐる、領土問題が存在していた。この領土はアゼルバイジャン領(1923年以来)だったが、アルメニアが戦争で勝利して以来、アルメニア領土として組み込まれてきていた。(1991年以来表面的にはナゴルノカラバフ共和国)
ここに来て、このナゴルノカラバフ問題が火を吹き始め、戦闘が展開されている。アゼルバイジャン側の発表によれば、既にアルメニア側に、170人の死者が出ているということであり、戦車や戦闘用ヘリなど、大型兵器も投入されている、ということを考えると、本格的な戦闘とみなすことが出来よう。
このアゼルバイジャンとアルメニアとの間で起こった戦闘では、アルメニア側は軍と呼ばず、分離軍と呼んでいる。そしてナゴルノカラバフは独立させるとも言っている。つまり、アルメニア側は本格的な両国の戦争ではなく、あくまでも地域紛争のレベルに、留めたいということであろうか。
しかし、この紛争をめぐって既に各国が、活発に動き始めている。トルコのエルドアン大統領はアゼルバイジャンを支援し、『必ずナゴルノカラバフを奪還するし、その支援を最後までやりぬく。』と発言している。
そればかりか、ウクライナのオデッサ港に、トルコは戦闘艦2隻を派遣したが、多分ロシアをけん制するためであろう。また、トルコとイラン、そしてアゼルバイジャンはイランで3国外相会議を、開催することになった。
この会議は、通常は経済や治安の協力を話し合うものだが、今回は状況からして、ナゴルノカラバフ問題が取り上げられることになろう。そこで、イランがどのような発言をするのかが、気にかかるところだ、なぜならば最近のイランは、ロシアと極めて近い関係を、維持しているからだ。
ロシアはロシアでトルコに対して、ナゴルノカラバフ問題に介入するなと警告を発している。アルメニアもアゼルバイジャンも、元はといえばソビエトの領土であったし、アルメニア正教の国家であることから、ロシア正教のロシアとは、特別な関係にある。
他方、アゼルバイジャンはイスラム教の国家であり、トルコとは宗教的に同じであり、アゼルバイジャン語はトルコ語の、方言のような違いしかない。これまでも親しい関係にあり、兄弟国だと両国はみなしあっている。
ロシアとトルコとの関係が悪化し、ロシアのガス輸出が止まる状況にあって、トルコのエルドアン大統領が代替のガス輸入先として、最初に訪問したのはアゼルバイジャンだった。
今回のアゼルバイジャンと、アルメニアとの紛争の後ろには、ロシアとトルコがくっきり見えてくるということだ。そして、それはロシアによるトルコに対する、締め付けとも取れなくも無い。
エルドアン大統領は必要とあれば、トルコ軍の派兵も断行する可能性があろう。それは、NATOが味方してくれるという、読みからであろうが、果たしてNATOはロシアとの戦闘に、巻き込まれることをよしとするであろうか。
最近、第三次世界大戦勃発の可能性が、あちこちで話題になっているが、今回始まった、アゼルバイジャンとアルメニアとの戦闘は、そのきっかけになる危険性が、あると考えるべきかも知れない。