チュニジアで結成された、統一政府がリビアのトリポリ市に入ってから、既に2週間近い期間が、過ぎている。その後のリビアの状況は、トリポリ政府が統一政府の支持に回り、新たな展開を見せている。
欧米が全面的に支援する、統一政府を支持した方が、先に行って得だ、という判断が、トリポリ政府の幹部に、広がったのであろう。確かに、欧米諸国は統一政府だけを政府と認め,そことは経済協力も、石油ビジネスも進めるつもりなのだから、統一政府と組まなくては、日干しにされる危険性があろう。
この統一政府が結成されて以後、ヨーロッパからはイタリアやイギリスがトリポリに外相を送り、統一政府に応分の協力をする方針であることを、発表している。彼らは統一政府を強固なものにして、リビア国内でIS(ISIL)が拡大していくことを、阻止したいということのようだ。
述べるまでもなく、リビアからは多くのアフリカ人経済難民が、ヨーロッパに渡っているのだから、リビアの政府を強化しなければならない、ということはヨーロッパ各国の、国益に直結することなのだ。
さて、そのヨーロッパが問題視しているIS(ISIL)は、いまリビア国内でどのような状況に、あるのであろうか。アメリカ政府は昨年に比べ、IS(ISIL)の構成員数が3000人から、倍の6000人に膨れ上がった、と発表している。
しかし、だからと言ってリビアのIS(ISIL)が、強化されたとは、言い難いようだ。それはIS(ISIL)がリビアに入り、当初期待していたパートナーが、いまだに見つかっていないからだ。
イラクでは、サッダーム・フセイン大統領の残党が、IS(ISIL)と手を組んだし、シリアではアサドに対抗する組織が、IS(ISIL)との協力関係を生み出したのであり、IS(ISIL)の力だけで、イラクやシリアでの地歩を、固めたわけではなかった。
IS(ISIL)はリビアでは、シリアやイラクと同様に、イスラム原理主義組織との連携を考え、次いで、カダフィの残党を引き込む、予定でいたようだ。しかし、カダフィの残党はIS(ISIL)と、手を組もうとはしていない。
それは、リビアの国民性からくるものであろう。外国人に勝手なことはさせない、という考えがリビア人の間では強いのだ。
リビアに入ったIS(ISIL)が支配地区で行う、厳しい住民に対する命令は、反発を買っている。服装や信仰形式、そしてIS(ISIL)による虐殺や拷問が、リビア中に知れ渡っているのだ。
欧米諸国がいま急に、リビアに出入りし始めたのは、IS(ISIL)を打倒するのがいまであり、遅れれば困難になるという判断を、下したからであろう。シリアやイラクの場合は、放置している間にIS(ISILが拡大し、その後、打倒することが困難になっているのだ。