ガスで金満長者になった国カタールが、世界中に情報を拡散して、一躍有名になったのは、やはりアラブの春革命がきっかけであった、と思われる。勿論、その前にはイラク戦争や、その他のアラブのニュースを伝えていたが、それほどの盛り上がりと、政治的な影響力は無かったのではないか。
アルジャズイーラはカタール政府の放送局であり、カタール政府の意向を十分に汲んで、運営されている。つまり、アメリカの中東戦略と、一体の放送局なのだ。従って、一部のニュースは信じがたいものであったし、アラブの春革命のなかでは、反体制派に必要以上にコミットしていた。
たとえば笑い話のような話だが、アルジャズイーラ放送が『今リビア政府軍は民間人に対して、実弾を発射し始めました!!』という現場からの報告があったが、実は催涙弾を撃っているだけだった、という笑い話のような話がある。
しかし、こうした報道は事実をゆがめて世界に伝え、反体制でもない政治的に無関心な人たちも、政治の渦の中に巻き込んでいったのだ。かつてアルジャズイーラはイラク軍のクウエイト侵攻時に、幾つもの嘘を報じている。『原油でべとべとになった哀れな水鳥』『赤ちゃんがイラク兵によって、床に投げつけられて殺された』という在米クウエイト大使の娘のデマ証言、勿論この娘は戦争難民、ということにされていた。
アルジャズイーラの意図的な偏向報道は、アラブ各国政府と大衆の間に、不快感を抱かせ、支持を減らしていった。エジプト政府はアルジャズーラのスタッフを逮捕し、裁判にかけている。
アルジャズイーラがそうした状況下で、新たなマーケットをアメリカ本土に開くことを決定し、アメリカ・アルジャズイーラが開局された。しかし、あまりぱっとしないのであろう、同局は閉鎖の方向にある。当然のことだ。アメリカには無数のテレビ局があり、そこで頭目を表していくのは、容易ではないからだ。
最近の石油ガス値下がりのなかで、さすがのガス金満国家カタールも、厳しい財政状況に陥ってきているようだ。そこでやり玉に挙げられたのが、アルジャズイーラだった。
カタール政府は大幅なアルジャズイーラスタッフの、首切りを決定した。このカタール政府の決定で、500人のスタッフが職を失うことになり、彼らには2か月分の退職金が、支払われることになっている。
この首切りで、アルジャズイーラのスタッフは、60%削減されることになり、カタールの首都ドーハ市にある本局でも、300人が職を失うことになる。
アルジャズイーラとはどのような視聴率を誇っていたのであろうか。テレビの視聴者は世界で2700万人、同社のサイトには120ク人がアクセスしていたということだ。
もったいないような気がするのだがカタール政府は2016年120億ドルの予算不足に追い込まれている。どうやらガスの値下がりが、アルジャズイーラの20年に渡る歴史に、終わりを告げるようだ。