『エルドアンの暴走は破滅につながる危険』

2016年3月 2日

 

 トルコのエルドアン大統領にとって、シリア北部のクルド・ミリシアには、よほど腹が立っているのであろうか。世界がシリアの停戦に合意しているなかで、エルドアン大統領はシリア北部への、砲撃を断行している。

 問題は、トルコ側が行う砲撃で、シリア・クルド側に被害が生じている場合は、国際的な非難の程度も軽かろうが、そこに来ているジャーナリストたちが、死傷することになれば、ことは簡単では済まされなかろう。

 現実にトルコ側からの砲撃で、昨日は中国、カナダ、ブルガリア、ロシアのジャーナリストが負傷した。被害者がジャーナリストの場合は、何倍もの効果があろう。トルコに対する一斉の非難が、始まるということだ。

 私はこのことよりも、もっと懸念すべきことが、トルコ・シリア国境にはある、と考えてきた。以前にお伝えしたように、シリア北部のクルド・ミリシアにはアメリカが軍事顧問を派遣し、武器を与えてもいる。

 これはトルコ側にすれば、アメリカの裏切り行為、ということになるのだが、アメリカにしてみれば、将来、シリア北部を通るガス・パイプ・ラインを通すためには、クルドに勝利してもらわなければならないのだ。クルド側の勝利が、自治につながって行けば、アメリカは安心してパイプ・ラインの建設に、取り掛かれるということだ。

これに対して、トルコ側はシリアのクルドが、自治権を持つようになれば、自国のクルドも動き出し、トルコは領土の5分の1を失う、と考えている。それを阻止するためには、エルドアン大統領は何でもやる、ということであろう。

こうした裏事情があるために、アメリカとトルコは、シリアのクルドを挟んで、極めて危険な段階に入りつつある。もし、トルコ軍の攻撃が砲撃だけではなく、地上軍のシリア北部への侵攻、そしてそれと同時に、空爆が行われるようになれば、アメリカの軍事顧問が、死傷する事態も生まれよう。

アメリカはトルコとの関係を、終わらせるために、アメリカ人の軍事顧問が死傷していないにもかかわらず、死傷を伝える可能性もあろう。

アメリカばかりではなく、ヨーロッパもロシアも中国も、こうしたデマ情報を流すことにより、自国を優位に持っていこうとするのは、国際関係では常套手段であろう。

つまり、アメリカがシリア北部に、軍事顧問団を送ったことと、4か国のジャーナリストが負傷したということは、今後の展開を予測させる、危険な兆候だということだ。