『見えてきたかシリアの落とし処』

2016年3月 1日

つい最近になって、ロシアがシリアの将来についての、考えを明らかにした。それによれば、シリアは各勢力で3分割し、連邦制にするのが理想的な解決策だ、ということのようだ。

述べるまでもなく、3つの勢力とは、アサド大統領を中心とするアラウイ―派であり、トルコやサウジアラビア、そしてアメリカが支援してきた、スンニー派の反政府勢力であり、クルドの集団ということになる。それらの3つの集団(政治勢力)がそれぞれの領土を確保し、自治に移行していけば、全体として問題が解決し易いということだ。

その位置関係について述べれば、地中海沿岸のほとんどは、アサド大統領を中心とする、アラウイ派の領土となり、シリアの北部はクルドの支配下に置かれ、残りの大半のシリアの領土は、スンニー派の反政府勢力の支配下に、置かれるということだ。

この構想がロシア側から出てきたのは、アメリカとの妥協であろうし、それはロシアがシリアのタルト-ス港の、海軍基地を維持し、アサド大統領の生きる道を確保してやる、ということであろう。

ロシアはアフガニスタンでの長期戦で、経済的に疲弊した経験から、シリアでの戦闘にも長期的には、加わりたくないという判断が、あったのではないか。

アメリカはこの3分割による解決が実現すれば、反政府勢力(スンニー派)の地域、クルドの地域に対する強い影響力を、維持することができるということだ。当然ことながら、アメリカには以前から、シリア分割の考えがあり、国務省の高官がそれを口にしている。

ロシアは一見、アメリカに対して大幅な譲歩を示したかに見えるが、取るべきものは取る、ということではないか。最近のエジプトとの関係改善に加えて、シリアの軍港を確保し続けることができれば、ロシアは地中海における軍事的プレゼンスを、維持できることになり、政治的な影響も中東諸国に、行使できるということだ。

今回実現したシリアの停戦を、出来るだけ長期化させ、停戦状態のなかで、今後のシリアの国家のあり方を、各派間で合意を生み出したいのが、米露共通の考えであろう。このロシアの新構想に対して、強い不満を抱くのがトルコのエルドアン大統領であり、彼は既に『いかなる勢力も、トルコとの国境沿いに、自治区を確保することを認めない。」と語っている。彼が言う勢力とは、述べるまでもなくクルドのことだ。

しかし、米露が合意すれば、エルドアン大統領の意向は、完全に無視されることになろうし、それを声高に叫び続ければ、彼の身が危険になろう。