『イラク・シリアがISに攻勢・トルコの不安』

2016年3月25日

 

 シリアの場合はロシア効果であろうか、あるいはアメリカがイラク軍に、武器供与を増やしたことによるのであろうか。シリアもイラクもIS(ISIL)に対して、強気の攻勢に出ている。

 シリア軍はIS(ISIL)が支配する、パルミラを奪還する作戦に出ているし、イラク軍も北部の、大都市モースル市(イラク第二の都市)の奪還に、軍事行動を始めている。

 シリアの場合はロシア軍の空爆で、IS(ISIL)に相当のダメージを与えることにより、自信をつけたのであろうか。それとアサド大統領の今後が、ほぼ不安のない状態になってきていることが、シリア軍の結束を強めているのかもしれない。

 他方、イラク軍の場合はアメリカが武器の供与を増やしたことと、イラク国民が結束し始めてきていることによろう。今回のモースル奪還作戦には、イラク軍に加え、シーア派ミリシアやクルドのペシュメルガ軍が、参加する方針になっている。

 当面はこれらの混成部隊で、モースル近郊の町村を奪還し、次いで、バグダッドからの正規軍の増派を得て、作戦は本格化するということだ。このモースル奪還作戦については、必ずしも明るい見通しばかりではないようだ。

 モースル奪還作戦について、明るい見通しだけではないのは、イラク軍が本格的な態勢を立てるまでには、まだ当分の時間がかかり、その間にIS(ISIL)側が、応分の準備ができるからだ、と専門家は語っている。

しかし、イラク軍はここ1年以内に完全にモ-スルを奪還する、と言っているし、既に周辺の町村を奪還してもいる。そして周辺を落として、モースルを包囲する作戦のようだ。

モースル市はIS(ISIL)側にとっては、シリアのラッカ市(ISが首都だと言ってきていた)に並ぶ重要都市であり、ラッカ市が危険な状態に陥ったために、多くのIS(ISIL)幹部や家族が、逃げて来たのがこのモースル市なのだ。

つまり、IS(ISIL)はいま、まさに窮地に立たされている、ということであろう。そのIS(ISIL)がモースル市の次に、逃げ延びていく先は、トルコが第一の候補として、考えられるのではないか。

種々のスキャンダルで、国際的な信用を急落させているトルコは、これまで支援してきた、IS(ISIL)によって、まさに窮地に立たされるのであろう。

トルコ以外のシリアとイラクの周辺国には、IS(ISIL)が入っていく余地はない。イランもヨルダンも歓迎するはずがないし、軍事的にもしっかりしている。ヨルダンの場合は、アメリカもイスラエルも本格的な、支援することになろう。