『悪化の一途をたどるアメリカ・トルコ関係』

2016年2月15日

 

シリアの北部に居住するクルド族は、アメリカにとって最も有効な、対IS(ISIL)組織ということになる。確かにコバネの戦いでは、それまでシリア軍もイラク軍も勝利出来なかった、IS(ISIL)との戦いでコバネのクルド・ミリシアは、勝利したのだ。

 アメリカにしてみれば、このクルド組織PYD(政治組織)と、その下部機関である軍事部門担当のYPGは、頼もしい限りであろう。アメリカはこのPYDYPGを使って、IS(ISIL)をコントロールすると同時に、アサド体制にも圧力をかける、という作戦であろう。

 しかし、トルコにしてみれば、PYDYPGに対する対応が、アメリカとは全く異なる。シリアのクルド組織は、トルコでテロ活動を展開している、PKK(クルド労働党)と連携する、テロ組織という判断に、立っているのだ。

 トルコがPYDやYPGに対して、神経質になっているのは、シリアのクルド組織とPKKが連携して、シリア北部にクルド自治区を設立する。しかも、IS(ISIL)との戦いを口実に、次第にクルドの支配地区を、拡大することだ。

 トルコ政府はクルド組織に対して、ユーフラテス川の西には来るな、と警告してきていた。ただ、今の段階でクルド組織が明確に、ユーフラテス川の西側を、支配しているという情報はない。

 加えて、PKKとは異なりシリアのクルド組織PYDが、トルコのなかでテロ活動を行った、という事実はない。したがって、トルコ側の動きは、早計ということになろう。

トルコの懸念はわからないでもないが、クルド側の動きが巧妙なだけに、場合によっては完全に、アメリカやNATO諸国を、トルコは敵に回してしまう、

危険性がある。

トルコの軍事行動は早計であり、しかも、アメリカとNATO諸国の、対シリアイラク作戦を邪魔するものになるからだ。クルドを使ってアサド体制を弱体化させるアメリカの作戦には、ロシアも全面的な反対は出来まい。