『トルコ窮地・大変革の前兆か』

2016年2月11日

 

 トルコ国内で大きな変革が起こる、可能性が出てきている。その一つは、アメリカとロシアのシリア・クルド(PYD)に対する対応が、大幅に前進したことだ。アメリカは特使ブレット・マクガーク氏を、シリア北部のクルドの拠点コバネに派遣し、今後の双方の関係を、話し合ったようだ。

 当然のことながら、これにエルドアン大統領は激高し、『アメリカは地域を流血に追い込むのか』と非難している。エルドアン大統領の不安は、アメリカがクルドを支援し、シリアのクルド人が自治権を確立していくことを、恐れているためであろう。

 確かに、それは十分にありうることであろう。そして、アメリカのシリア・クルド(PYD)に対する、好意的な対応と時を同じくして、ロシアがシリア・クルド(PYD)に対して、モスクワにオフィスを設立する、手助けをしたのだ。このクルドのオフィスは、欧州地域連絡事務所と命名されていることから、今後、シリア・クルド(PYD)はこのオフィスを拠点に、ロシアだけではなく、ヨーロッパ諸国に対しても、働きかけていくことが予測される。

 こうした動きは、多分にロシアとアメリカが、クルド問題の解決に向けて、共同歩調を取り始めていることを、意味しているのではないか。そうなればトルコとしては、真正面からこの問題を取り上げ、強硬な対応をせざるを得ない、ということであろう。なかでも、エルドアン大統領は、そう考えて強硬な対応を、取ることが予測される。

 以前にも書いたように、シリアのクルド人がアメリカやロシアの支援を受けて、自治権を確立するようなことになれば、それはトルコ国内のクルド人にも、少なからぬ影響を及ぼすこととなり、トルコのクルド人も同様の動きに出よう。また、トルコのクルド組織PKKは、ますます勢いを増して行くことになろう。

 そのことは、トルコ軍とPKKとの武力衝突が、激化することを意味しており、だからこそ、エルドアン大統領は『アメリカは流血を望むのか』と非難したのであろう。

 しかし、エルドアン大統領がどう声高に叫んでみても、現在の状況はトルコに、不利なのではないのか。トルコを支持する国が、ほとんど皆無だからだ。ヨーロッパ諸国はシリアの難民問題で、トルコから恫喝を受けているし、ロシアとの間では、ロシア機撃墜以来、最悪の関係が続いている。アメリカとの関係もIS(ISIL)対応の違いから、距離が開きかけてきているのだ。

 そうしたなかで、ギュル元大統領がAKP内の、反エルドアン人士と会合を持っている。これはAKP内部に大きな波紋を、生んでいくのではないか。トルコのエルドアン大統領は、いま正念場に立たされたということか。