『サウジのシリア派兵は大国意識・アメリカの命令』

2016年2月 7日

 サウジアラビアが混沌としている、シリアの国内状況を見るに見かねて、陸軍を派兵する方針のようだ。多くのシリア人が難民として、トルコなど周辺諸国に、流れ込んでいる実情からすれば、一見、極めて人道的な決定であり、賞賛に値しよう。

 しかし。シリアのムアッレム外相は、このサウジアラビアの決定を拒否している。シリアとの合意無しにサウジアラビアが、シリアに派兵するなどということは、認められないというのだ。彼はシリアに入った外国兵は、棺桶に入れられて帰国することになろう、と語っている。

 サウジアラビアのシリアへの陸軍派兵については、イランの将軍も反対している。アリー・ジャーファリ将軍は正規の戦闘ではない、ゲリラ的な攻撃に対しては、サウジアラビアの陸軍は何の対応も、出来ないだろうということだ。

 これに対して、サウジアラビア国防相のアドバイザーであるアハマド・アシーリー氏は、国際軍の一員として参加するのであり、IS(ISIL)と戦うためだと説明している。

 サウジアラビア政府は3月に、アラブなどの合同軍を結成し、15万人の兵士を訓練するつもりのようだ。それに参加が予定されているのは、モロッコ、トルコ、バハレーン、スーダン、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦などのようだ。

 つまり、サウジアラビアは他の国の兵隊を使って、シリアで戦闘し、あたかも、サウジアラビアが戦っているようなイメージを、作り出そうということであろう。また、それはアメリカのシリアにおける戦闘を、国際社会が支持している、というイメージにする上で役立とう。

 イエメンとのサウジアラビアの戦争で分かるように、サウジアラビアは大量のミサイルや爆弾を、シリア国民の上に無差別に落とすだろう。それはアメリカに取っては、兵器が大量にさばけるのだから、大歓迎であろう。

 サウジアラビアの陸軍が、シリアに派兵されるということは、サウジアラビアの国威発揚であり、アメリカにはシリアでの戦争に、正統性を持たせることになる、ということだ。

 たまらないのは、そこに派兵されるサウジアラビアの兵士であり、爆弾の豪雨を降らせられる、シリア国民であろう。この話に、サウジアラビアの属国のような立場にあるバハレーンが、加わるということだ。全てはアメリカの、圧力なのだろうか。