リビアにIS(ISIL)が入り込んで、既に2年ほどの時間が経過しているが、その後どうなのであろうか。エジプト人コプト教徒20人以上を斬首することで、華々しくリビア入りを宣伝したIS(ISIL)は、その後、どのような状況になっているのであろうか。
最近になって欧米、なかでもアメリカとフランス、そしてイギリスとイタリアが事の外、リビアの状況に対して、強い関心を寄せている。リビアのIS(ISIL)をめぐる会議が、これらの国々によって、開催されてもいるほどだ。
現段階では、いずれの国も明確なかたちで、リビアへの軍事侵攻を口にしてはいないが、どの国も何時でも軍事侵攻する意思がある、というのが本当のところではないか。
それはリビアの地理的な位置に寄ろう。リビアはアフリカへの入り口、と言われて来た国であり、ヨーロッパ諸国はリビアから、アフリカに進出していたし、その逆に、アフリカからヨーロッパに渡るのにも、リビアは好立地にある。
このことが、欧米がリビアの国内状況に、高い関心を払う理由だ。リビアから多数の難民(経済難民あるいは移住者)がヨーロッパに向かっており、ヨーロッパ諸国にとって、大きな問題になっているからだ。このアフリカ移民者のヨーロッパへの流入を、どう阻止するかは、リビアの対応にかかっているのだ。
欧米にとって、もう一つのリビアへの関心は、IS(ISIL)のリビアへの台頭であり、これはリビアの石油をめぐる問題だ。IS(ISIL)がリビアの石油を支配すれば、リビアばかりではなく周辺諸国、なかでもエジプトとチュニジアに、大きな影響を及ぼすし、他のアフリカ諸国にも、同様であろう。
カダフィ大佐は生前『アフリカ通貨』の創設を提案したが、それはリビアの石油収入を、ベースにしたものであった。同様にIS(ISIL)がリビアの石油、手中に収めれば、IS(ISIL)はアフリカ中北部諸国とヨーロッパ諸国に、決定的な影響力を、持つことができるようになるのだ。
欧米諸国は出来るだけ早く、リビアへの軍事侵攻の口実を、見つけ出したいと考えているようだ。既に、リビアの石油積出港周辺地域は、IS(ISIL)の手中にあると伝えられ、シルテ市はIS(IL)の首都に変わり、IS(ISIL)のイスラム法統治が進んでいる、とも伝えられている。
欧米のリビアへの、軍事侵攻が現実化すれば、欧米諸国は膨大な量の爆弾を、リビアの各都市や石油施設に投下し、街も施設も廃墟にしてしまうだろう。そうなればまさに、IS(ISIL)の思う壺であろう。リビア人が反欧米の側に回ろう。
このことを最初に恐れ、欧米の軍事侵攻に、いまの段階から反対しているのは、チュニジアのシブシ大統領だ。彼はなんとしても、リビア問題を平和的に、解決して欲しいと訴えている。リビアが戦場になれば、難民がチュニジアに押しかけて来るし、チュニジアはIS(ISIL)の兵站地になる、危険性もあるからだ。
しかし、小国チュニジアの大統領の必死の訴えは、世界の何処の国にも、聞こえないだろう。欧米のリビアの石油を狙う戦争を、阻止することは出来まい。そして、イラクやシリアと同じように、ここでも無辜の民が、多数殺されるということだ。