ヨーロッパのなかで、経済的状況が最も良好なドイツに、ほとんどのシリア難民が、移住することを望んでいる。ドイツが難民の受け入れに対して、穏健難対応をとっていることも、その一因であろう。しかし、難民支援の費用は膨大な額に達しており、それがドイツの財政に、大きな負担になってきていることは、否定できまい。
その結果、ドイツには110万人のシリア難民が入国している。問題はこの難民が、ドイツ国内で犯罪を起こすケースが、激増していることだ。暴力事件やレイプ事件が報告されているが、実は窃盗事件も発生しているのではないか。
こうなると、ドイツ国民の間にメルケル首相の、難民に対する対策は甘い、という批判が生まれてくるのは、当然であろう。国民による反シリア難民デモも、起こっている。
このため、保守派の政党のなかからは、シリア難民など難民が、非合法に入国を試みた場合は、国境で射殺しろという強固な意見を、述べる者も出てきている。
メルケル首相は国民の不満を、なだめる意味もあるのだろうか、最近になって次のような発言をした。『あなた方がドイツに留まれるのは、シリアが平和になり、イラクではIS(ISIL)が敗北するまでだ。その後は帰国してもらう。』
そして、そうなることを期待したのは、ユーゴスラビアの難民の、例からであろう。ユーゴスラビアからの難民は、国内が安定化した後、70パーセントが帰国しているからだ。
しかし、シリア難民の場合はそうは行かないのではないか。シリアが貧困であることに加え、体質的に民主的な体制が生まれるとは、考え難いからだ。そうである以上、シリア難民はドイツに留まることを望もう。
アルジェリア、チュニジア、モロッコについては、それらの国々が安定化したとして、難民申請を受けつけないことを、決定している。またモロッコ国民でドイツに留まる者については、モロッコ国王との間で話し合われ、モロッコ政府は自国民を、帰国させることを伝えている。
トルコがシリア難民の、ヨーロッパへの流入の阻止をしてくれる、という期待から、EUは30億ユーロの援助金を送ったが、まだその成果は、あがっていないようだ。
エーゲ海でのシリア難民の海難事故死が続くなかでは、ドイツもトルコも対応に、苦慮していることであろう。東ヨーロッパ諸国は国境での、入国阻止策を強化しているため、危険ではあるが、難民たちは海路を取るしかないのであろう。