『トルコ政府が学者大量逮捕へ』

2016年1月16日

 

 トルコ政府が学者を、大量に逮捕し始めている。既に、12人が逮捕されたが、トルコ政府は残る学者たちも逮捕する、と息巻いている。この逮捕劇はトルコ南東部で、多くのクルドの一般人が、犠牲になっていることから起こった。

 トルコの大学を中心とする学者たちが、何とかこのクルド人の悲惨な状況を、阻止しようとして、署名を行ったものだ。この署名運動には1128人が参加し、署名している。

 この署名運動には、外国の学者たちも賛同し、署名しており、それはヨーロッパだけではなく、アメリカの学者も署名に参加した。例えば、著名なスロベニアの哲学者であるスラボジ・ゼゼク氏や、アメリカのノーマン・チョムスキー氏も署名している。

 トルコ政府はこの動きに対して『テロの宣伝だ。』と反論している。トルコ南東部のクルド人は、皆暴力的であり非合法だというのであろうか。そもそも、多くの死傷者がトルコ南東部で出ているのは、トルコ政府が軍を派遣し、PKKと戦闘を展開しているためだ。

 加えて、トルコ政府は1128人の署名した、学者たちを全員逮捕し、1年から5年投獄する予定だということだ。エルドアン愛統領とダウトール首相は早い段階からこの署名運動を非難していた。

 エルドアン大統領に言わせると、この署名運動は卑劣な行為であり、残酷だというのだ。これまでに犠牲になったトルコ南東部のクルド人は、162人にも上っているのだから、エルドアン大統領と署名した学者たちの、どちらが残酷かは、誰にもすぐ分かろう。

 述べるまでも無く、ヨーロッパ諸国の学者たちや、アメリカがこの問題については、高い関心を寄せている。在トルコのアメリカ大使のジョン・バス氏が『学者の自由発言を認めろ』というと、アンカラの市長メリ・ギョクチェク氏は『お前なんか出て行け』と反論している。

 もうこうなっては、けんか腰ということであろう。一国の大使の発言が、気に食わないからといって、公職にある人物が『出て行け』などというのは、常識ではありえないことであろう。そのような発言が許されるのは、エルドアン大統領の取っている、言動によるのであろう。

 これでは逆に、エルドアン体制は欧米の反発と、国内の有識者からの反発が広がり、長くはあるまい。あるトルコのインテリと話したとき、彼は23年でエルドアン体制は終わると言ったが、私は1年持たないだろうと応えた。