以前から書いてきたように、IS(ISIL)はシリアでもイラクでも次第に不利な状況に追い込まれ、支配地域を縮小している。それはロシア軍の台頭と、ロシア空軍による空爆の成果だ。
ロシアがシリア政府の正式な要請を受け、軍をシリアに展開するようになると、IS(ISIL)側は防戦に必死の状況に、追い込まれた。他方、シリア軍はロシアの空からの援護のもとに、地上戦を有利に戦えるようになった。
結果として、シリアではパルミラなどを除く、ほとんどの都市がIS(ISIL)の支配から、解放されつつある。パルミラの解放が遅れているのは、IS(ISIL)の抵抗よりも、遺跡を出来るだけ破壊したくない、というシリア政府の、判断によるのではないか。
そのことと、パルミラには残存IS(ISIL)の戦闘員が少なく、武器や食糧の補給もままならないので、早晩放置していても陥落する、というのがシリア政府の、判断なのかもしれない。
シリアの場合にはクルド族の健闘も、評価に値する。シリア軍と連携して彼らも、IS(ISIL)に立ち向かっているのだ。クルドのミリシアとシリア軍との間には、敵対する部分もあるが、当面の敵IS(ISIL)に対しては、連携して戦うという姿勢だからだ。結果的に、IS(ISIL)が今までにシリアで失った支配地域は、2万平方キロメートルという報告がある。
イラクの場合も同様に、IS(ISIL)は追い込まれている。ここではシーア派を中心とするイラク軍に、スンニー派のミリシアが、協力するようになったのだ。クルドのミリシアも協力的な動きをしている。
テクリート地方はイラク軍によって解放され、モースルも近く解放されるだろう、という見通しをイラク軍は出している。この場合もモースルに隣接する地域は、大分IS(ISIL)が後退している。
シリアのラッカ市はIS(ISIL)が首都と言っていたが、そこからはこれまでも報告したように、相当数のIS(ISIL)の戦闘員や家族が、逃げ出している。そこから逃げ出したIS(ISIL)のメンバーが、逃げ出して移住する場所が、モースルだというのだから、IS(ISIL)にとっては地獄の始まりであろう。
これら全てのシリアとイラクにおける、IS(ISIL)の置かれた状況の、大きな変化は一にも二にも、ロシア軍の台頭であろう。そのことは、今後ロシアが中東地域への影響力を増していくことが、ほぼ明らかだということでもある。
その埋め合わせを、アメリカはこれからどう、付けていくのであろうか。アメリカの世界支配や世界制覇、指導はありえなくなるかもしれないのだ。