来年のことを言うと、鬼が笑うそうだが、誰もが来年は何が起こるのか、という不安を抱いていることだろう。そこで、中東に限って、来年の予測をしてみることにした。結果がどうなるかは、2016年の年末に判ろう。
:パレスチナは本気で戦い始める
いままで、アラファトの時代の後半も、アッバースの時代も、パレスチナ自治政府『PA』はパレスチナへの同情を煽り、世界から援助を求め、その金のごく一部を、パレスチナ大衆に配ることによって、成り立ってきていた。
しかし、これでは問題の解決にはならない。そのため昨年ごろから、本格的な闘争が始まり、2015年はナイフを使った抵抗運動が続いた。2016年はそれに銃器が加わるのではないか。また、ファタハや他のパレスチナ抵抗グループが、戦闘を始めるのではないかと思われる。
:トルコは危機的状況に進もう
エルドアン大統領の存在価値は、アメリカの対シリア・イラク作戦に使える駒だったからだ。しかし、ロシアのISに対する、本格的な攻撃が状況を一変させ、アメリカも本格的な攻撃をISに仕掛けざるを得なくなった。
また、アメリカはISを使って、シリアとイラクに工作しよう、と思っていたことがほぼ完了した。こうなると、アメリカはトルコを使う必要が、無くなったということだ。
アメリカは2016年に入り、エルドアン大統領とその家族や、取り巻きのスキャンダルを、大きく報じる事になろう。報道への圧力、賄賂、石油密輸、難民を使ったEUへの脅しなど、エルドアン大統領の犯罪行為は多すぎるのだ。
:エジプトは緩やかな改善に向かう
シーシ大統領はエジプトの未来を、明るくする要素を持っていると思う。彼は潔癖であり、真剣に自国の発展を模索している。2015年に完成した第二スエズ運河は、世界経済の後退で、あまり大きな利益を生み出していないが、それは将来への投資となろう。
エジプトの中東地域における、安定した国柄は湾岸諸国や、他の地域諸国にとって、魅力的でもあろう。サウジアラビアが本格的に、エジプトに対する経済支援を進めているのも、そのためだと思われる。
エジプトの持つ外交ネット・ワークと、その底力がこれから浮上してくるのではないか。パレスチナ問題も、シリアの問題も、湾岸の安定も、エジプト抜きには考えられまい。
:リビアは次第に落ち着いていく
リビアはカダフィ大佐が殺害されて以来、未だに内乱状態が続いているが、2016年には一定の合意が生まれ、それが進むのではないか。
リビアへのISの進出も、話題になってはいるが、どうもISはリビア人のなかに、支持者を増やしかねているようだ。リビア人は外国人を信用しない、保守的な民族であり、ISが力で屈服させようとしても、そうは行くまい。
ISへの警戒心が、結果的にリビア人を、結束させるのではないかと思われるし、それを米仏も望んでおり、しきりに国連によるリビア人同士の、和解工作を働きかけてもいる。
:サウジアラビアが不安定になろう
サウジアラビアはアメリカの前衛として、アラブ諸国に介入してきていた。アメリカが臨む体制転覆の攻撃対象国に対して、サウジアラビアは反政府派に、莫大な支援を送ってきていた。
しかし、ISの活動が沈静化してくると、サウジアラビアの暴挙が表面に出てきて、同国は国際的な非難を、受けることになろう。
ISに参加していた、サウジアラビア人戦闘員たちは、シリアやイラクでISが劣勢に回り、多くのメンバーが逃げ出していることから、彼らもサウジアラビアに帰って来よう。
そうなれば、帰還IS戦党員が、サウジアラビア国内で、破壊活動を始める、ということではないか。既に、ISのリーダーであるバグダーデイは、サウジアラビアを次の標的にする、と宣言している。
:イランはゆっくり前進
アメリカとイランとの関係が、最大の問題であったイランは、アメリカとの間で核問題に関する、一応の合意を得ていることから、ヨーロッパ諸国やアジア諸国との関係を拡大して行こう。
このことについては、アメリカも一応はクレームを付けても、あまり踏み込みはしないだろう。それはロシアの台頭が、国際政治のなかで、大きくなってきているからだ。
アメリカが余りヨーロッパ諸国やイラン、アジア諸国に、圧力を掛けるようなことになれば、アメリカは世界で孤立することになるからだ。既に、ドイツやフランスは、ロシアとの協力拡大を、模索し始めているし、そのことは、アメリカも気がついている。