『ロシアがタリバンと情報交換協力』

2015年12月26日

 

 ロシアが旧敵であった、アフガニスタンのタリバンと、情報面で協力する方向に、動き出している。これはなぜ始まったのか、実に興味深いものがある。情報が流れ始めた段階であり、真相に関する情報は、まだ出ていないが、想像できることが多くあるので、それを書いてみることにした。

 アフガニスタンにIS(ISIL)が、2~300人程度入ったという情報は、以前から流されていたが、彼らが一部のIS(ISIL)の支持を得ていることも、伝えられている。IS(ISIL)がアフガニスタンに進出したのは、麻薬取引を始めるためだ。

 アフガニスタンは旧ソ連のトルクメニスタンや、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタンに隣接していることもあり、ロシアにとっては極めて、緊急対応を要する問題であろう。

 アフガニスタンにIS(ISIL)が入り込み、大きな力を持つようになれば、それは中央アジア諸国にとって、危険な状態が生み出されることになろう。また、これらの中央アジア諸国や、ロシアやコーカサスの反政府勢力が、アフガニスタンに入り込み、拠点を持つことにもなろう。

 このため、ロシアは旧敵であるとはいえ、タリバンとの協力が必要になってきた、ということだ。述べるまでもなく、アメリカが支援している、アフガニスタンの正統政府には、首都カブールをかろうじて、支配する程度の力しかないから、実質的に力を持っているタリバンと、組むということであろう。

しかし、タリバンはアフガニスタンの正統政府ではないため、軍事協力や武器の供与、ロシア軍の進出といったことは、考えられない。そこでロシアが考えたのは、相互の安全のための、情報交換協力ということだ。もちろん、ロシアからタリバンへの、非合法な武器の供与は、十分ありえようし、もっと込み入った関係も構築していこう。

 以前から、中央アジアの覇権をめぐり、アメリカが進出して行くだろう、という予測があった。そしてIS(ISIL)がアフガニスタンに進出したのは、まさにアメリカの尖兵としてではないのか、と考える専門家もいる。

 ロシアのアフガニスタンへの新たな動きは、こうしたアメリカの動きに、対抗するものではないのか。もし、IS(ISIL)が応分の実力を、アフガニスタンで持つようになれば、アフガニスタンの麻薬は、ロシアに大量に流れ込むし、ヨーロッパ諸国にも流れ込むことになろう。その結果がどういうものになるかは、誰にも想像がつこう。

 ロシアはこの情報の前に、キルギスに対して武器援助も含む、治安協力をスタートする、と発表している。そのことは、中央アジア諸国が危険水域に、近づき始めているということであろう。