カダフィ大佐亡き後、リビア国内状況は混沌を、5年間も続けている。各地にはそれぞれの自治組織が誕生し、それらはミリシア組織としても、動いてきている。
富の配分をめぐり、リビア人が部族や人種などで分裂するのは、十分理解できるのだが、そのことが西側世界にとっては、大きなマイナス要因となっていることも事実だ。一番顕著な例は、兵器用材料となる、炭素繊維の入手が、困難になっているという点だ。
その炭素繊維は石油から作るのであり、蝋分や硫黄分の少ない、リビアの低パラフィン、低サルファの石油は、炭素繊維を作るのに最も向いているといわれてきていた。そのため兵器輸出国であるアメリカやフランスは、リビアの石油を手に入れたくて、しょうがなかったのだ。
最近、IS(ISIL)のリビアへの台頭からしばらくして、リビアの分裂する各派のなかに、協力意志が出来つつあるようだ。それは、よそ者のIS(ISIL)に、石油を自由にはさせない、ということから来ているのであろう。
そして、つい最近出てきたのが、リビアとエジプトの、石油輸出に関する合意だ。その合意はまだ正式発表にはなっていないが、ほぼ間違いあるまい。リビアの国際的に認められている、トブルクに本部を置くリビア政府が、東リビア石油会社に許可し、同社の石油をエジプトに輸出する、というものだ。その総量は、20億バレルだといわれている。
しかし、この輸出には当然のこととして、トリポリに本部を置く政府が、クレームをつけて来ることが、予測されよう。西側の各国は、トリポリ政府管轄下にある、NOC(国営石油会社)を取引相手としているからだ。
東のトブルクに本部を置く政府は、エジプト政府との間に、石油の輸出合意を交わしただけではなく、石油技術者の訓練についても、合意したようだ。そのことが今後、西側のリビア政府との間に、どのような結果をもたらすのか、興味深いところだ。
案外、西側に位置するトリポリ政府は、この東側の石油取引を、口先では非難しながらも、黙認するのではないかと思われる。
それは、東西リビアの間に、和平の基本合意が出来、24の地方自治体の長がその合意に、サインをしているからだ。つまり、リビアの内戦は終わりにしよう、ということではないのか。そうした合意が行われ、実行に移されなければ、リビアは石油を、IS(ISIL)に牛耳られて、リビアはテロの一大巣窟になってしまう、危険性があるからだ。
リビア人もここまで来て、やっとIS(ISIL)の危険性を冷静に考え、対抗策を考え出したのかもしれない、それの具体的な動きが今回の、東側の石油をエジプトに売る合意ではないのか。