4年以上続いている、リビアの内部対立と武力衝突に、やっと終わりの時が来る気配がしてきた。国連が仲介して、モロッコで行なわれた交渉で、統一内閣を結成する基本合意が、結ばれたのだ。
しかし、これはあくまでもリビア各組織のなかで、最大規模の2勢力が合意したものであり、全てのグループが参加したものではない。2大勢力とは、トリポリを拠点とする、宗教色の強いリビアの夜明け組織政府と、トブルクに拠点を置く世俗派のリビア政府だ。
しかし、これ以外にもリビアには、幾つもの組織があるわけであり、彼らは会議そのものに、参加していないのだ。従って、今後、富の配分をめぐり、不参加の組織が騒ぎ出し、結果的に今回の合意が、失敗に終わる可能性もある。
国連やリビアの2大勢力が心配しているのは、今回の合意が失敗に終わった場合、状況はこれまでよりも、悪くなる可能性があることだ。そうなれば、これからまた長い期間、和平へのステップは、足止めされることになろう。
それにもかかわらず、今回、国連が2大勢力に強い圧力をかけて、統一政府結成の合意をさせたのには、それなりの理由があるし、2大勢力が合意を受け入れたのにも、それなりの事情があったからだ。
国連や欧米にしてみれば、リビアがアフリカからヨーロッパに流れ込む、不法移民の拠点になっているという問題がある。シリアやイラクからの難民が、何十万人も押し寄せているなかで、アフリカからの難民(?)も押し寄せたのでは、さすがのヨーロッパもたまるまい。
そこで国連が登場して、強硬にリビアに対し、統一政府を作らせ、アフリカからヨーロッパに流れ込む不法移民を、リビアが阻止するように、仕向けようとしているのだ。
しかし、それはそう簡単ではない。不法移民の移送を仕事にしている輩がいるのだから。たとえ統一政府ができたとしても、取り締まりは楽ではあるまい。しかも、このビジネスは結構な利益を生み出すのだ。
もう一つの問題は、リビアにIS(ISIL)が既に入ってきており、各地で戦闘を展開しているということだ。IS(ISIL)が狙っているのが、リビアの石油であることは、誰もが知っていることであり、そのことは、リビア人に共通する、大きな問題となっている。
国連はこれを何とかしなければ、大変なことになると、リビアの2大勢力の代表に説得したのであろう。人はどこでも自分の利害が絡んだとき、真剣に対応するようになる。今回もそうであって欲しいものだ。