『イラクのトルコ軍基地攻撃受ける』

2015年12月17日

 

 飼い犬に手をかまれるというのは、こういうことをいうのであろうか。いままで散々面倒を見てきたIS(ISIL)が、トルコに対して牙をむいたのだ。イラクの北部クルド自治区にある、トルコ軍の基地に対し、IS(ISIL)がロケット弾を、撃ち込んだのだ。

 これはいままでの中東情勢を、大きく変更させる、前兆ではないのか。何度も書いてきたように、IS(ISIL)はトルコのMIT(情報部)の全面的なバック・アップで、成り立ってきていた。

 戦闘員はトルコ領土からイラクやシリアに向かい、資金も武器も同じように、トルコを経由していたのだ。加えて、トルコは大量の武器をIS(ISIL)側に送り、戦闘員が負傷した場合の、病院も設立していた。病院にはエルドアンの娘スメアが、頻繁に出入りしているのだ。

 また、IS(ISIL)の主たる資金源である、シリアやイラクでの盗掘石油を、トルコと手を組んで、密輸出しているのだ。その密輸取引には、エルドアン大統領の子息ビラールが、直接関与している、と言われている。

 エルドアン大統領がこうまでも、IS(ISIL)に肩入れしていたのは、石油の密輸が儲かることと、シリアのアサド体制を倒すためにIS(ISIL)を使うつもりであったからであろう。それが今回のIS(ISIL)によるトルコ軍への直接攻撃で、トルコIS(IS(IL) 協力関係は、胡散霧消したということだ。

 実はこの変化には、前兆があった。トルコが本格的にIS(ISIL)を攻撃するよう、アメリカがトルコ政府に、圧力をかけているのだ。その結果、トルコ政府はIS(ISIL)に対し軍事行動を、起こさなければならなくなっていたのだ。そうした動きがあった後に、今回のIS(ISIL)による、トルコ軍に対する攻撃があった、ということではないか。

 推測の域を出ないのだが、最近のトルコの動きには、アメリカの意向がネガテイブに、強く働いているのではないか、と思えることが沢山ある。そして、それはトルコにとって、必ずしも好都合なことではないのではないか、と思えてならない。

エルドアン大統領にとっては、すこぶる付きの、不都合な状況ではないのかと思える。トルコによるロシア機の撃墜事件の謎、その後のロシアのトルコに対する厳しい対応、そしてトルコに対する難民対応への非難や、トルコの石油密輸の暴露、そしてそれを大きく取り扱う西側マスコミ、、。

あるいはトルコはいま、世界で孤立し始めているのかもしれない。なかでもエルドアン大統領の立場は、極めて不安定になっているのではないのか。そうでもなければ、ダウトール首相の『大統領制を二義的問題だ』などというエルドアン大統領に対し、真っ向から非難するような発言は、出てくるまい。