『トルコはグチャグチャになるのか?』

2015年12月15日

 

 最近のトルコは、マストの折れた船が、嵐の海に浮かぶような、状態ではないだろうか。しっかりした国家の方針が、全く見えてこない。ダウトール首相はエルドアン大統領が望む大統領制について『大統領制はトルコにとって、二義的な問題であり、現在のトルコにとっては、最重要課題ではない』と語った。

 この発言はエルドアン大統領の意向と、真っ向から衝突するものであり、エルドアン大統領にとって、極めて不愉快なことであろう。

ダウトール首相の発言の後、すぐにエルドアン大統領は、大統領制の重要さを指摘し『政府の決断がいまの状態では、2人の指導者がいる状態であり、遅くなる。そもそも、ダウトール氏はわが党のアドバイザーであったものが、現在では首相に就任しているのだ。』と批判している。

 エルドアン大統領はイスラエルとの関係を、強化したいとも語り、そのことは、トルコの経済にプラスだ、と語っているが、ロシアのトルコに対する輸入制裁が、こたえているのであろう。現在のトルコには、経済的には何らいい兆しは見えてこない。

 トルコ・リラはドルに対して下げており、政府が介入しても市場は、そのとおりには動いていない。ロシアの貿易に対する制裁に加え、中国の経済の悪化も、トルコの経済に影響しているのであろう。湾岸諸国との経済関係も、このとろろ低迷している状態だ。

 そうしたことに加え、エルドアン大統領の対IS(ISIL)対応に、IS(ISIL)が噛み付いてきている。IS(ISIL)はトルコが地上部隊を送るのであれば、トルコ国内での戦闘を始める、と警告しているのだ。

 これまでも小規模ではあるが、IS(ISIL)が関与しているのではないかと思われるテロ事件が、何度かトルコ国内で起こっている。そのことは、トルコとIS(ISIL)とのハネムーン時代は、終わろうとしている、ということであろう。

 アメリカがロシアに煽られて、IS(ISIL)に対する対応を180度変更し、トルコもそれに従わなければならなくなったことが、直接の原因であろう。IS(ISIL)はイラクとシリアでの役割を、既に終えており、これからは、他の国に移動すること、そのためには、トルコを安全な状態で通過できることが、ネックとなってくるのであろう。

 それはきわめて難しい舵取りを、トルコがしなければならない、ということであろう。国内経済、国内の政治的対立、ロシアとの関係、欧州との関係、難民問題、そしてIS(ISIL)問題が、一気にトルコを襲っている、ということだ。