トルコによるロシア戦闘機撃墜事件は、いまだに尾を引いている。トルコ側はロシアに対して、謝罪をするつもりはなく、トルコには自国を守る権利がある、と主張している。
他方、ロシア側は『領空侵犯はしていない』として、トルコによる撃墜を非難し、次々とトルコに対する、制裁策を発表している。G20会議でのプーチン大統領による『トルコはIS(ISIL)の石油密輸入]暴露発言は、今後、両国関係に波紋を呼んで行く可能性が高い。
ロシアが行っている、トルコに対する制裁の効果が、いち早く顕れているのは、生鮮野菜果物のロシア向け輸出が、止められたことだ。この結果トルコの生産者や輸出業者は、資金繰りに困り、ローン地獄に陥っている。
輸送業者も然りで、ロシアへの貨物の搬入が止められており、困惑している。また、ロシアで雇用されていた特殊技術者も、解雇されている状態だ。また、ロシアからの観光客が途絶えたことも、トルコにとって大きな問題であろう。ロシアからの観光客は単に観光するだけではなく、トルコで大量に物を買い、運び屋のようなことも、兼ねているからだ。
トルコ政府はこれらのロシアによる、制裁によって発生する被害総額は、90億ドル程度、と試算しているが、あるいはそれ以上かもしれない。国民の不安を軽減するために、トルコ政府が被害総額を、少なめに発表するのは当然であろう。
もうひとつの大きな問題は、ロシアがガスのトルコへの供給を止めた場合、トルコは凍土の冬を、過ごすようになるかもしれないということだ。エルドアン大統領は『カタールやイランなどから輸入するから問題は無い。』と豪語しているが、やはり、ロシアからパイプ・ラインで送られるものに比べ、単価が高くなるのではないか。
加えて、トルコ・ストリーム建設が中止され、トルコがロシア・ガスの中継点として、ヨーロッパ諸国に圧力をかけることのできる、武器を失ったということだ。このことは、ロシアからのトルコへの、ガス供給が止まったことに加え、トルコの国際社会での地位を、低下させるものとなろう。
それらのことに加え、ロシアはトルコへの原発建設も中止した。ガスや石油のエネルギー輸入が、貿易に占める割合が、非常に高いトルコにとって、原発の建設はその問題の、突破口であっただけに、苦しい状態になったということだ。それは日本の原発への期待を、膨らませることになろう。
トルコはこれまで石炭で暖房を、とってきていたことから、空気汚染が問題となっていたが、ガスや石油の輸入で、この問題が解消されていたのだ。