『ISはシリアからリビアに本部を移転』

2015年12月 3日

 

 ロシア軍の猛爆撃で、ISISIL)のシリアある首都ラッカ市は、とてもそこにISISIL)のメンバーが、留まれるような状況では、なくなってきている。

 このため、ラッカ市に代わる首都を、IS(ISIL)は他の国に設立する、意向のようだ。その構想で浮かび上がってきたのが、リビアのシルテ市だ。シルテ市はリビアの地中海岸に位置し、ちょうど東西の中心に位置している。

 この街は、カダフィ大佐の出身地であり、同時に彼が虐殺された場所でもある。それだけに、シルテ市を抑えることには、意味があるのかもしれない。

 現在リビア国内には、およそ23000人のIS(ISIL)戦闘員が、いるといわれている。彼らはシリアやイラクの戦闘地域で、戦った戦闘体験者たちだ。彼らはシリアやイラクで戦闘経験を積み、今では帰国し、新たなIS(ISIL)集団を、結成しているということだ。

 しかし、IS(ISIL)の帰国組は、いまのところリビア国内では、成功していないようだ。リビア人の支持がなく、なかなか大戦闘部隊を、結成することが出来ないでいるのだ。

 IS(ISIL)のリーダである、アブーバクル・バグダーデイは、リビアでの地歩の確保に熱心なようで、有能な幹部をリビアに送り込んでいる。シルテではあまりうまくいっていないが、リビア南部のオバリなどでは、武器も豊富にあり、潜入も容易であることから、とりあえずの拠点とするということかもしれない。

 アブーバクル・バグダーデイがリビアに執心なのは、リビアが産油国であるからだ。この国の石油を支配すれば、北アフリカ全域での活動が容易になる、という見通しであろう。

 しかし、現実はそう簡単ではない。産油地の支配、パイプ・ラインの支配、そして積出港の支配が、困難なためだ。

 このIS(ISIL)のリビアへの本格的な進出を前に、リビアの各派はやっと統一政府を、結成する方向に動き始めている。よそ者に勝手なことは、させたくないからであろう。

 同時に、リビアの周辺諸国もリビアでのIS(ISIL)の拡大を懸念し、対応会議を開催している。参加したのはニジェール、アルジェリア、スーダン、エジプト、チャドの5か国だ。

 これらの国々は、今後IS(ISIL)に関する情報を交換し合い、対応で協力していくということであろう。同時にイギリスやフランス、アメリカが強い関心をリビアに対して持ち始め、軍事行動も排除しない、という姿勢になってきている。