政治的な安定が、その国の通貨の価値に、大きな影響を与えている。トルコの通貨リラは、ドルに対して20パーセント下落した、と民間調査組織が発表した。しかも、それは今年では世界で、5番目にドルに対して、価値を下げたということだ。
ドルに対してもっとも価値を下げたのは、アルゼンチンのペソであり、次いでブラジルのレアル、そして南アフリカのランドだ。
南米の国々が通貨の価値を下げたのは、一般的な経済不況に加え、アメリカの金利引き上げも、影響しているのかもしれないが、アメリカが金利の引き上げを発表したのは、この調査の後だと思われるので、もっと下げているのではないか。
トルコのリラは毎年、約8パーセント下げてきていたが、ここに来て、19・8パーセントと大きく下げた。それはロシアとの緊張関係、それに伴う対ロ貿易の停止もあろう。
国内的には失業問題があり、成長率が伸びず、観光業もロシア人が来なくなったことに加え、治安の悪化から欧米や日本からの客が、激減しているのだ。加えて、ヨーロッパに居住している、トルコ人の里帰りも、トルコでテロが増えていることから、控えられるようになっている。
このような状況は、今後、当分の間続くものと思われる。そこには、改善の兆しは全く見えない。ロシアとの関係は冷却期から緊張関係になり、戦争勃発すら話題になるところまで、悪化しているのだ。
トルコの周辺諸国との関係は、一時期の善隣友好は完全に消え去り、イラクとはクルド問題で、シリアとはアサド体制に対する敵対的姿勢から、悪化の一途だ。また、エジプトとの関係も、エルドアン大統領がムスリム同胞団を、支持していうることから、改善の兆しは見えない。
加えて、ヨーロッパ諸国が難民問題を巡り、トルコを嫌悪するようになったことだ。アメリカも今では、トルコに対する期待は、ほとんど無くなったのではないのか。そうであるとすれば、トルコにとって、2016年は厳しい一年のなるものと、予測される。