サウジアラビアが世界中のイスラム国家に呼びかけ、IS(ISIL)に対抗する組織を結成した。このサウジアラビアの呼び掛けには、34か国が参加することを表明している。
この新しい組織は、『対テロ軍事同盟』と名付られたようだが、果たしてどの程度の効果が、あるのであろうか。この組織のメンバーには、エジプトやパキスタンといった、イスラム世界の軍事大国も含まれてはいるが、十分に機能するには、まだ障害がありそうだ。
まず、イラクやシリアの問題であるにもかかわらず、これらの国々が参加していないことに加え、対テロ軍事同盟がイラクにもシリアにも、認められていないことだ。
したがって、この対テロ軍事同盟はどのようにして、軍隊をイラクやシリアに送り込むのか、情報活動はどうやって、イラクやシリアに認めさせるのかという問題がある。サウジアラビアはこれまで、アサド体制打倒に動いてきていただけに、サウジアラビアとシリアが、たとえテロ対応といっても、協力することはありえまい。
加えて、地域大国であるイランが、参加していない点も問題であろう。イラクでもシリアでも、イランの影響力は大きく、無視するわけにはいかないからだ。今回の対テロ軍事同盟組織の結成は、今後、サウジアラビアとイランとの関係を、より一層悪化させるものと思われる。
テロに対抗するためには、当然のことながら、情報という地味な作業が、重要になって来る。しかし、サウジアラビアには情報対応が、出来るとは思えない。辛うじてエジプトとパキスタンが その弱点を補えるだろうが、そのことに対して、サウジアラビアが両国の経費を、潤沢に出すかとなると、話しは別であろう。
必要に応じて軍隊をイラクやシリアに、派兵するとなった場合、その経費はどの国が負担するのかも、大きな問題であろう。軍事大国のエジプトもパキスタンも、大規模な軍隊を送るほどの、余裕はないからだ。そうなると、サウジアラビアが負担するのかということになるが、そうもいかないのではないか。
結局、今回の対テロ軍事同盟は、サウジアラビアのメンツのために、結成された組織であり、対米従属の意思表示の組織であろう。イエメンとの戦争でも、サウジアラビアは多くの国に、派兵を要請したが、結果はほとんどの国が、形式的な小規模派兵でごまかすか、派兵しなかったが、今回も同じであろう。
The list of 34 members: Saudi Arabia, Bahrain, Bangladesh, Benin, Chad, Comoros, Djibouti, Egypt, Gabon, Guinea, Ivory Coast, Jordan, Kuwait, Lebanon, Libya, Malaysia, Maldives, Mali, Morocco, Mauritania, Niger, Nigeria, Pakistan, the Palestinians, Qatar, Senegal, Sierra Leone, Somalia, Sudan, Togo, Tunisia, Turkey, United Arab Emirates and Yemen.